意外な産業が成長している。それが「玩具市場」だ。少子化が進む中、この10年で市場規模は36%増加し、1兆円を超えた。1979年に発売された、ランダムでペンダントが封入された女児向けの玩具菓子「セボンスター」が現代でヒットするなど、驚くべき現象が起きている。市場拡大のキーワードが「キダルト消費」だ。SNS時代にこの新たな消費が急拡大する理由を考察する。
少子化が進む日本において、意外にも玩具市場は成長を続けている。日本玩具協会によると、2023年度の国内玩具市場は1兆193億円と、この10年で36%増加し、初めて1兆円を超えた。同じ期間に15歳未満の子どもの人数が14%減少したことを考えれば、驚くべき成長だ。
この成長をけん引しているのが「キダルト」だ。「キッド(子ども)」と「アダルト(大人)」を組み合わせた造語で、子どもの心を持ち続ける大人を指す。 キダルト需要の高まりは、「子どものときに体験したことが消費につながる」ことを示しているのではないだろうか。玩具は単なる子ども向け商品ではなく、子ども時代の記憶と結びついて感情的な価値を持ち、大人になってからも消費され続ける。
「子どものときの体験」が消費につながる例として、カバヤ食品(岡山市)の女児向け玩具菓子「セボンスター」の24年のヒットが挙げられる。
1979年に発売されたセボンスターは、きらきらしたデザインのペンダントアクセサリーにチョコレートが同封されている商品で、幅広い世代の乙女心をくすぐっている。2024年は発売から45周年という節目でもあったが、24年上期の販売個数は前年同期比約1.3倍と躍進。その結果、計画を上回る注文を受けて供給が追いつかず、一部の製品の販売休止を余儀なくされた。
セボンスターが大ヒットした背景には、TikTokなどSNSでの話題の広がりがあった。セボンスターを開封するショート動画は100万回以上の再生回数を連発し、顧客の裾野を広げた。
セボンスターの中心的な購買層は「発売時から変わらず、初めておしゃれを楽しみたい3~12歳くらいの女の子」である一方、SNS上では「明らかに20代以降の声が目立つようになった」。
セボンスターを製造・販売するカバヤ食品マーケティング本部ブランド企画部部長兼ブランド企画部企画二課課長の川口篤氏は「こんなにも大人のファンが反応するのかという気づきを得た」と日経クロストレンドの取材に語っている。
セボンスターのヒットから見えてくるのは、子ども時代の共通体験がSNSで共有されることで、「かつて子どもだった」大人からの広い共感を呼び、消費が喚起される構造だ。SNSのショート動画などは、そうした共通体験を効果的に可視化し、拡散する場として機能している。