新たに構える店には「映える」を売りにした内装の貸しスタジオなども入れて、もし、自分のブランド――特に新しく挑むレストラン事業が不調になり撤退を考えた時にも、その場所をどこかに貸し出すことで家賃収入を得られるような、そういう理想的な建物が欲しいと、カミノにやってきた。
市子の話を聞いてすぐ、新見が閃(ひらめ)いたように言ったのだ。「なら、いい建物があります」と。そして、紹介したのがここだった。
新見は基本的に建物が好きだ。もっと言うなら、土地が好きだし、不動産業というこの仕事を愛している。それは、儲(もう)かる儲からないという次元を超えてもう偏愛や趣味と言っていいレベルだ。自社の所有するビルやマンションのひとつひとつの魅力を語るとき、新見はとても饒舌(じょうぜつ)で、その瞳は無邪気に輝いている。巨額の資金が動く不動産業界で彼のような人が成功している秘訣(ひけつ)は、この偏愛と無邪気さに…