チベット出身の政治学者、ペマ・ギャルポ氏は2日、産経新聞の取材に、チベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世(90)のオーディオブックが米音楽界最高の栄誉とされるグラミー賞を受賞したことを歓迎した。「チベット人として誇りに、うれしく思う。法王は日頃から『慈悲』『共存共栄』『環境保全』を唱えている。法王の話に耳を向ければ、もっと世界は平和になる」と述べた。
ペマ氏はダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表などを歴任し、ダライ・ラマ14世に直接仕えた経験を持つ。チベットには中国人民解放軍が侵攻し、1959年に当時7歳だったペマ氏はダライ・ラマ14世とともにインドに逃れた。ペマ氏は65年に来日した。
ペマ氏は、今回の受賞について「トランプ米大統領や習近平国家主席ら世界の指導者が人間不信に陥っているとみられる中、法王は絶えず思いやりと慈悲の心で接している。世の中全体がギスギスする中、法王のメッセージが輝いたのではないか」と語った。
ダライ・ラマ14世について「宗教間や非宗教者との対話を呼びかけており、対立や分断をあおる大国の姿勢とは真逆だ。私も中国に憎しみの気持ちがないわけではないが、いわゆる『過激派』にならなかったのは法王の教えのおかげだ」と語る。ペマ氏の兄も人民解放軍に射殺されたという。
ペマ氏は、「法王の教えは『人を憎むな。罪を憎みなさい』。(南アフリカの黒人解放運動指導者)ネルソン・マンデラ氏以外に、こういう指導者は珍しい」と述べ、「悪に対して抵抗は必要だ。ただ暴力によって抵抗すれば、成功しても暴力が暴力を招く。人種関係なく、多くの人に法王の教えを知ってもらいたい」と訴えた。
ダライ・ラマ14世の「メディテーションズ ダライ・ラマ法王の考察」は、グラミー賞の最優秀オーディオブック、ナレーション、ストーリーテリング・レコーディング賞を1日に受賞した。(奥原慎平)