衆議院選挙2026

経済 日経新聞 2026年02月02日 19:46

高市早苗首相が衆院選の応援演説で円安の利点について言及し波紋を呼んだ。為替介入のために設けた外国為替資金特別会計(外為特会)の運用が「ホクホク状態だ」と表現した。外為特会は野党の中にも財源として期待する意見がある。打ち出の小づちになり得るだろうか。

外為特会は為替介入のための外貨準備を管理する。円高局面で介入する際には、政府短期証券を発行して調達した円を売ってドルを買う。介入で得た外貨は米国債などで保有する。円安局面では、米国債などを売って調達したドルを売り、円を買う。介入で得た円は政府短期証券の償還にあてる。

財務省によると2025年末時点の外貨準備高は1兆3697億ドル(およそ210兆円)に達する。過去に実施した円売り・ドル買い介入の局面で外貨準備高が膨らみ、12年ごろから1兆3000億ドル前後での推移が続く。

外為特会では外貨資産から得た利子が歳入となり、政府短期証券の利払い費が歳出になる。日本の方が海外よりも金利が低い状態が続いているため、金利差による利益が生じる。為替相場が円安に振れると、海外から受け取る金利収入が円建てでみて大きくなる。

外為特会の利益に当たる剰余金は、すでに一般会計に繰り入れるなどして財源として使われている。現行ルールでは剰余金の最大7割を一般会計に繰り入れることができる。

24年度は特別会計の決算概要の公表を始めた08年度以降で最高の5兆3603億円の剰余金が発生し、25年度予算の一般会計に3兆2007億円を繰り入れた。このうち約1兆円が防衛費に回っている。現行ルールを維持したままでは、剰余金を新たな財源として活用することは難しい。

円安が進む中で外貨建て資産の含み益を活用する議論もあるが、実現にはハードルがある。外貨準備は将来の為替介入の原資であり、取り崩せば介入の余力がそれだけ小さくなる。

大規模な取り崩しをすれば為替や債券の市場にも影響が出る。

ドル建ての資産を円にかえる行為は、為替介入と同じ効果が生じる。介入は市場での投機的な動きへの対応として限定的に国際社会で認められている。介入が必要でもない場面で、ドル建て資産を売却することに米国から理解を取り付けることは簡単ではない。

外為特会の資産には野党も財源として着目する。国民民主党は今回の衆院選の政策集のなかで、積極財政の財源について外為特会や年金積立金、日銀保有の上場投資信託(ETF)などの運用益や売却益を活用すると盛り込んだ。

昨年夏の参院選では、立憲民主党が時限的な食料品の消費税率ゼロの財源の一つとして外為特会の剰余金活用を想定していた。

首相は1日には自身のX(旧ツイッター)で応援演説における為替発言の意図について、「円高と円安のどちらが良くてどちらが悪いということではなく『為替変動にも強い経済構造を作りたい』との趣旨で申し上げた」と説明した。

「『円安メリットを強調』した訳ではない」とコメントしたが、外為特会についての自身の発言については触れなかった。

首相が言及したように円安にはメリットとデメリットの両面がある。円安の場合、輸出企業の収益が改善し、株価の上昇につながりやすい。エネルギーや食料、原材料などの輸入価格が上昇してインフレ圧力になる。近年は円安になっても輸出数量は伸び悩んでおり、国内企業の生産拡大には結びついていない。

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