服の大量生産→大量廃棄が社会問題化して久しいが、アパレル業界の「服の寿命を延ばす」試みが同時多発的に広がってきた。古着のショー、傷みを防げるスーツの開発、修理、服と地球の相関を考える展覧会…。昨秋の国会では、外交交渉の場で着る服について問われた高市早苗首相も「15年前の服も引っ張り出して着ている」などと話していたが、服を長く大切に着る行為は個々の体形維持や流行に左右されないセンスの見せどころでもあり、財布にもやさしくて奥が深い。
重低音のビートに乗ってスタイリッシュなモデルたちがランウエーをゆく…。着ているのは古着。世界でも例のない「レギュラーヴィンテージ(普通の古着)」ファッションショーだ。海外トップモデルを含む25人が、古い服の味わいと洗練を表現していた。
今月13~15日に東京・西新宿で開催された「東京ヴィンテージファッションウィーク」のひとコマ。環境アクティビストも制作に加わり、ZOZOなどアパレル関連11社が実行委員会を結成。107の古着店が集まるマーケットも開かれ、3日間で1万8623人を動員した。
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「家の洗濯機で洗ってつるしておけば朝にはスーツが乾いて、そのまま着て出かけられる。合理的であり、自分で手入れをすることで服への愛着を高めたい」と語るのは、オーダーメードスーツの「ファブリック トウキョウ」(東京都渋谷区)の戦略責任者、土山純史さん(43)。
同社はライオン(東京都台東区)との共同開発で、洗剤「ナノックスワン」によるすすぎ1回洗いで「30回洗っても新品級」をうたうスーツ(4万9800円~)を2月26日に発売した。すすぎを減らすことで生地の傷みと環境負荷を軽減できる。新開発の生地はポリエステル主体で一見平織りに見えて伸縮性のある微細な編み生地。上手に洗える専用ネットも同時に開発した。3色中2色が早々に品切れする反響で、3月中には再び全色そろう。
ロスを出さない受注生産にこだわる同社は、毎年11月に世界規模で行われる大量消費セール「ブラックフライデー」に対して、洋服の価値と消費のあり方を提起する「ホワイトフライデー」を実施。昨年は、能登半島地震復興支援も兼ねて石川県の生地メーカーと協業したスーツを商品化した。
その物語を伝えるSNSに「いいね」を押した人が、自分の「いい値」で買える企画を行ったところ607人が応じた。いい値は1円~20万円超で、抽選で決まった14人の購入金額も1万円未満から10万円以上と幅があった。購入者からは「安易に安値を付けられない緊張感があった」との感想が寄せられている。
傷みやすいパンツ内側補強、不要な服の回収→クーポン付与にも取り組み、平成24年の創業以来、オーダー服累計50万着を超えた。
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東京・表参道駅近くのゴールドウイン本社1階に、全国の子供たちから寄せられた約800作品が所狭しと並んでいる。「地球にやさしい未来の服、ひらめき展」(29日まで)だ。
アイデアを募った作品は、光合成で二酸化炭素を吸収する服、雨水による洗濯など、奇想天外な想像力が面白い。端切れや廃材で作った服もあり、一生懸命考えている顔が浮かぶ。「地球のために自分が何ができるのか、子供たちは自由に発想してくれる。今は笑い話でも、何十年後には当たり前になっているかもしれない」と企画責任者の稲村淳さん(52)。
同社では昨年度、全国の小中高65校約2300人に服と環境をテーマにした出前授業を実施しており、今回の展覧会に発展した。他社に先駆けて平成初期から服の修理を事業化し、直近で年間約1万7千件の利用がある。本会場でも修理体験コーナーを設け「直して使う」大切さを伝える。
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服を大切に長く着ることに大賛成。だが悲しいことに、5年前の服が入らない。ダイエットで地球環境に貢献したいものである。(重松明子)