米国とイランが合意した停戦と協議を危うくしかねない。イスラエルのレバノン攻撃は、戦闘終結とホルムズ海峡の開放を遠ざける恐れが強い。危機を長引かせる軍事行動をやめるべきだ。
イランは停戦合意の対象にレバノンを含むと唱えるが、イスラエルは含まないと主張する。レバノンの親イラン武装組織ヒズボラをたたくため8日に大規模な空爆を加え、300人超が死亡した。
米イランが11日に協議開始を控えたなかでの大々的な攻撃は何のためか。イランは合意違反と非難し、ホルムズ海峡の実効支配を継続した。原油先物価格は再び上昇した。エネルギー供給を人質に取るのは卑劣だが、そうなると知っていて挑発するのも許されない。
国連が攻撃を強く非難し、敵対行為の停止を求めたのは当然だ。前後してサウジアラビアやクウェートがイランに攻撃され、イランではラバン島の製油所に攻撃があったと報じられた。停戦を有名無実にしてはならない。
イスラエルのネタニヤフ首相は10月までに総選挙を控える。政治的延命へ戦果を求めているとの見方が強い。これまでも米イランの協議の最中に攻撃を仕掛け、対話の機運をそいできた。
今は戦火拡大と世界経済の混乱を止める好機だ。レバノン攻撃には中東諸国などが相次ぎ懸念を示した。イスラエルはヒズボラの攻撃に対処する自衛の権利があるが、度を超している。
国際社会の懸念を意に介さない頑固さは、パレスチナ自治区ガザへの攻撃と通じる。イスラム組織ハマスとの停戦発効から10日で半年だが、イスラエル軍はガザの半分以上をなお支配する。
残りの土地に住民を押し込める非人道的な状況を固定化してはならない。ハマスも武装解除に応じなければ和平は前進しない。
中東の緊張は域内で飛び火し、延々と危機が終わらない恐れがある。全体として緊張緩和を探るのが望ましい。国際社会はすべての関係国に自制を迫る必要がある。