ナタリー・ポートマン製作総指揮アニメ映画、「ジブリ」からの影響と共通点 『ARCO/…

文化・エンタメ 産経新聞 2026年04月14日 07:15
ナタリー・ポートマン製作総指揮アニメ映画、「ジブリ」からの影響と共通点 『ARCO/…

劇場アニメ『ARCO/アルコ』(24日全国公開)公開記念トークイベント「ジブリとバンド・デシネの系譜を受け継ぐ、世界が認めた新世代アニメーション」が10日、東京日仏学院 エスパス・イマージュにて行われ、スタジオジブリの西岡純一氏、バンド・デシネ翻訳家の原正人氏、映画ライターのSYO氏が登壇した。

【動画】『ARCO/アルコ』に多大な影響!“移動遊園地化”する「ジブリパーク展」

本作は、ナタリー・ポートマンが製作総指揮を務め、CHANEL協賛、NEON配給で、世界各国の映画祭で絶賛を浴びてきたSF冒険ファンタジー。物語の舞台は、気候変動が進んだ2075年。10歳の少女イリスは、ある日、虹色に輝く謎の物体が空から落ちてくるのを目撃する。それは、虹色の飛行スーツをまとい、タイムトラベル能力を持つ、遠い未来から不時着した少年アルコだった。未来へ帰る手がかりを探すアルコと、現実に縛られて生きてきたイリスは、虹色のスーツに秘められた謎を追いながら、“未来への帰還=虹の道”を探す旅に出る。しかし、謎の三つ子から追撃される展開が待つというストーリー。

監督は、ヨーロッパを代表する稀代のクリエイター、ウーゴ・ビアンヴニュ氏。「すべての人に向けた映画。『E.T.』『ピーター・パン』『となりのトトロ』『天空の城ラピュタ』など心に深く刻まれた冒険映画の系譜に連なる作品を目指した」と語っている。

西岡氏は「アヌシー国際アニメーション映画祭で『ARCO/アルコ』を観たんですけど、ジブリの影響が凄いなと思って。『もののけ姫』の音楽に似てるよなとか。背景の描き方も二次元で描いていて、そんなに細かく動いていない。その辺の背景の描き方に似ていると思いました。随所にオマージュを感じながら観ていました」と、至る所に“ジブリのDNA”を感じたと語る。そんな西岡氏はウーゴ・ビアンヴニュ監督とも会っていろいろと聞き出したそう。「監督は本作を作ったのが38歳の時で、宮崎駿が『ルパン三世 カリオストロの城』で映画デビューしたのも38歳の時なんです。彼もこれからきっとすごい大監督になるんじゃないかなと感じた」と期待を寄せる。

ジブリの影響を色濃く受けた監督だが、原氏は「監督はもともとバンド・デシネも出版していて、2014年に最初のバンド・デシネを出しているから、10年以上バンド・デシネ作家でもある。もともとアニメをやりたかった人でもありまして、ゴブラン(パリにあるアニメーションスクール)の出身で、そこはフランスでもトップで、エリートが集まるところ。そこを卒業してアニメ界で活躍する人もいれば、バンド・デシネで活躍する人もいる。監督はその両方なんです。バンド・デシネの系譜という点からいうと、日本でもよく知られているメビウスという人がいて、イラストレーション、アニメーションの仕事も結構やっていて。そしてそのメビウスとルネ・ラルーの『時の支配者』という作品がよく知られている。そことの連続性を感じさせる」とバンド・デシネの観点から監督に言及する。

「キャラクターがすごく少ない線で描かれているんだけど、とても立体感があるんです。日本のアニメは顔が記号で目がぱっちりとあって、鼻がなくて口がパクパク動くみたいな感じで、全然立体にすることができないんです。でもこの『ARCO/アルコ』は、ものすごく立体で会話してたり演技してたり、ある意味リアルなんです」と西岡氏。「背景もすごく魅力的。あと動きですよね、動きは『時の支配者』などは日本のアニメ的な動きとかはちょっと違って、それが魅力なんだけど、そこをさらに乗り越えて日本のアニメがやっぱり本当に好きで取り込んでいるんだろうな」と原氏も続ける。

そのアニメーションの動きについて、西岡氏は「3兄弟が乗っている車あるじゃないですか、あれがぴょんぴょん跳ねたりする、あれはルパンだよなとかね。これは完全にジブリを意識しているなと思ったのは、オープニングの方でアルコが動物の世話をしているじゃないですか、そこで水が流れているところ。あそこは実は今はジブリ美術館でしかやっていないんですが、『星をかった日』という宮崎監督の作品にそっくりなんです。もう至る所にそういったオマージュを感じるんです」とうれしそうに話した。

原氏は「本作に出てくる3人組はとんちんかんな感じで楽しいんですけど、彼らがしているサングラス、監督のバンド・デシネでは出てくるキャラクター全員がかけてる作品が多くて。ダサくも感じるけれど、かっこよくも見える。今、世の中全体で80年代のリバイバルみたいなことが起こっているかと思うんですけど、そういう雰囲気も感じる」と話すと、その3人組を西岡氏は「彼らは東宝特撮のオマージュかなと思った。昔の宇宙人って必ずああいうサングラスをかけている」とキャラクターの衣装からも日本の作品からの影響に言及する。

本作の終盤でのアルコの家族の描かれ方について、原氏は「なかなか日本のアニメとかでああいったギョッとするような演出はあるだろうか、やっぱり大人向けですよね。大人向けという部分はそのシーンに盛り込まれていて、監督はそれを良しとしている。私の勝手なイメージでいうと、制作に関して日本のアニメは製作委員会だったり、いろんな空気を読まなくちゃいけない雰囲気があって。その中でお客さんの方向を向かなくちゃいけないところがあるんですが、フランスの制作の良い点としては、アーティストの矜持は持っている気がする。バンド・デシネもアニメもそう、そういった点が本作にも出ていると思いました」と分析する。

西岡氏も「シナリオがしっかり練られていて、伏線を回収する、その辺がすごい気持ちいいですけど、そういったものが至る所にあって。ほんとによくできてるな」と、ネタバレに気を付けつつもアルコの家族のシーンを称賛する。

西岡氏はジブリとの共通点について「非常に強い共通点があって、アルコとイリスの2人だけで冒険するじゃないですか、これジブリ作品と同じなんです。つまりパズーでもシータでも千尋でも、親とかがいたら冒険できないんです。この作品でも親は遠くにいていないじゃないですか、ミッキというロボットしかいなくて。子ども同士で冒険ができてエンディングを迎えることができる。そこがジブリに構造が似ている。宮崎監督も『千と千尋の神隠し』ですぐに親を豚にしたのは、お父さんとお母さんがいたら冒険できないでしょってことで。そういうところにも非常に影響を感じました」と語る。

SYO氏は「自分が見てきた映画、例えば『インターステラー』みたいな流れる時間が違うっていう、SF映画好きからみてもニヤッとしてしまう。そして自分が好きなことを作中にこんなに入れても作家性というか独自性がちゃんと立っているというのは相当すごいことですよね」と監督に言及。

原氏も「バンド・デシネでも“継承”っていう、次に伝えるみたいなところをすごく自覚している感じがします。作画が演出レベルでもいろんなものを取り込んでいるんだけれども、これをこういうエンタメとして出してるというのはすごいなと思いますね」と続けた。

西岡氏も同じようなことを宮崎監督も庵野監督も言っていたとして「オリジナルっていうものはないとは言わないけれども、先人が作ったものを受け継いで自分が何かそこに加えたり消化したりして、次の世代に渡していく。アニメーションっていうのは通俗文化なんだから、そういうもんなんだ、と。だから誰かの影響を受けているとか、これは誰かのパクリだとか言われるけれども、それは違うんだ。影響を受けて、先人からもらったものを次の世代に渡すと。だからこの監督からもそれをすごく感じますよね。こうやってバトンは渡されていくんだ」と話していたことを明かした。

最後に西岡氏は「オリジナルのこういった海外のアニメーションというのはとても魅力的な作品がたくさんあって、ジブリ美術館もそういった作品の配給もやっているんですけど、この『ARCO/アルコ』はそういった作品の中でも珠玉の一品です。SF的でジブリの影響を感じるし、監督の意欲作だし、シナリオも素晴らしい。ぜひヒットしてもらいたい。日本のアニメとか漫画とかがこれだけ世界に出て、日本人は誇らしいとか思っているけれど、世界にはもっともっとすぐれた作品いっぱいありますよ」と熱く語り、締めくくった。

関連記事

記事をシェアする