女優の今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は25日、第63回が放送され、主人公・若松のぶと柳井嵩(北村匠海)の4年ぶりの再会が描かれた。嵩は「もし、逆転しない正義があるとしたら…僕はそれを見つけたい」と初回(3月31日)冒頭につながる自問自答。制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサー(CP)に作劇の舞台裏を聞いた。
<※以下、ネタバレ有>
第63回は、空襲の焼け野原で一人佇む若松のぶ(今田美桜)の前に、柳井嵩(北村匠海)が現れる。のぶは教師を辞めたことを明かし「うちは、子どもらあに取り返しのつかんことをしてしもたがや。あの子らあを、戦争に仕向けてしもうたがは、うちや」と後悔を口に。「うち、生きちょってえいがやろうか」と涙も。嵩は「死んでいい命なんて、一つもない」と静かに語り掛ける…という展開。
のぶ「嵩…うちは、どうすればよかったろうか」
嵩「僕も…そればかり考えてたけど、分からない。この先もずっと、それを…自分に問い掛けることしか…できないんじゃないかな。新しい世の中になっても、問い続けるしかないよ。正しい戦争なんか、あるわけがないんだ。そんなのまやかしだよ。そのまやかしの正義で、敵も、見方も、仲間も大勢死んだ。千尋も…。最後にあいつが言った言葉が、ちょっと耳に残ってる。『この戦争さえなかったら、わしは…愛する人のために生きたい』」
のぶ「千尋くん…」
嵩「だから、正義なんか信じちゃいけないんだ。そんなもの、簡単にひっくり返るんだから。でも、もし…逆転しない正義があるとしたら、すべての人を喜ばせる正義…。僕はそれを見つけたい。千尋のために、そうすることしか僕にはできないと思って。何年かかっても、何十年かかっても、みんなを喜ばせたいんだ。そう思ったら、生きる希望が湧いた。絶望なんかしてられないって。だから生きるんだ。千尋の分も、みんなの分も。のぶちゃんも、生きてくれ。次郎さんの分も、のぶちゃんが大好きな子どもたちのためにも」
初回冒頭、劇中の年代は1972年(昭和47年)。中年の嵩が絵に色を塗る“アンパンマン誕生前夜”が思い出される。
嵩「正義は逆転する。信じられないことだけど、正義は簡単にひっくり返ってしまうことがある。じゃあ、決してひっくり返らない正義って何だろう。おなかをすかせて困っている人がいたら、一切れのパンを届けてあげることだ」
小倉連隊に転属した嵩は中国・福建省の奥地に到着し「これのどこが、正義の戦争なんだ」と疑問を抱いたが(第56回・6月16日)、「正義は簡単にひっくり返る」「もし、逆転しない正義があるとしたら」と口にしたのは、この回が初。もちろん、まだ答えは見つかっておらず、初回冒頭につながる“自問自答の旅”が始まった。
「正義は逆転する」「逆転しない正義とは何か」の文言はやなせ氏の多く著作に記されているが、今作はのぶの価値観も戦争によってひっくり返るのが肝。教師の設定が効いている。
主人公のモデルとなった暢さんが高知新聞に入社する前の歩みは、詳しくは分かっておらず、倉崎氏は「それゆえに、中園さんや演出陣と一緒に仮説を立てました。当時、女性が新聞記者になるのは珍しく、暢さんも高知新聞社で戦後初の女性記者の一人です。銃後の女性として戦争を経験し、終戦を迎えた時、やはり自分自身で実際に現場に足を運び、見聞きし、感じたことが一番大事という考え方に至って、記者を志したということもあるのではないか」と述懐。
当時、多くの真面目で純真な女の子が軍国少女になっていったことから「のぶも女子師範学校に進み、黒井先生(瀧内公美)から軍国主義の教育を受けるという流れにしました」。4年ぶりに再び交わった2人の道。いかにして“逆転しない正義”「アンパンマン」に辿り着くのか。ドラマは第65話(6月27日)で折り返し地点を迎える。