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<華宝塚>ときめき 持ち続けたい 月組・鳳月杏

<華宝塚>ときめき 持ち続けたい 月組・鳳月杏

  月組公演「フリューゲル-君がくれた翼-」(11月19日まで、東京宝塚劇場)は、ベルリンの壁崩壊直前のドイツが舞台。東独の軍人ヨナス(月城(つきしろ)かなと)と西独のスター・ナディア(海乃美月)の恋を軸に、東西統一を目指す市民を描く。惹(ひ)かれ合う2人を監視する東独秘密警察のヘルムートを演じる。  作・演出の齋藤吉正からのリクエストは「コンピューターのような男」。人としての優しさや温かさがなく、冷静に現実を見詰める冷たい人物-と捉え、目線の配り方など立ち居振る舞いで「つかみどころのなさ」が出るように心がけた。共感しづらいキャラクターだが「その国のためにと考えていて、(ヨナスとは)やり方が違うだけだとも思う。そこを掘り下げると、理解できなくもなかった」。  ショー「万華鏡(ばんかきょう)百景色」では付喪神に扮(ふん)し、物語を引っ張っていく。「神様なので、気付いたらそこにいて全体を見ているような、大きなオーラを感じてもらえるように演じた」。芥川龍之介や小説「地獄変」の絵仏師・良秀にも変化し、万華鏡さながらだ。  一人のファンだった小学生のころ、遠い世界の「宝塚の男役」が舞台でふと素顔をのぞかせた瞬間に「ぐっと距離が近くなって、ときめく」感覚があった。そのときの自分の気持ちを大事にしている。「学年が上になっても、宝塚を好きな気持ちやときめきを持ち続けたい」 (石原真樹) ●● 三つの質問 ●●   (1)最近ハマっていることは?  -掃除。元は片付けられないタイプでしたが、帰宅後や起床時に部屋がきれいだと気持ちが上がる!と思うようになり、出かける前に掃除しています。  (2)大切にしている言葉や、座右の銘は?  -「誰かのためなら頑張れる」。しんどい、きついと思うのは自分だけに気持ちが向いているとき。共演者やお客さまのためにと思うとパワーが出ます。  (3)続けている健康法は?  -睡眠。のどの調子が心配なときなどもがっつり寝ます。アロマやお香をたくことも。 <ほうづき・あん> (1)出身地=千葉県船橋市 (2)出身校=国府台女子学院中学部 (3)入団年=2006年 (4)愛称=ちなつ、てね (5)趣味=旅行 (6)特技=同期と笑いを共有すること  ※2024年1月17~31日の月組公演「G.O.A.T」(大阪・梅田芸術劇場メインホール)に出演予定。

文化・エンタメ 東京新聞
2023年10月26日
<華宝塚>純粋に男役を愛する 花組・星空美咲

<華宝塚>純粋に男役を愛する 花組・星空美咲

 オペレッタ時代劇が原作の花組公演「鴛鴦(おしどり)歌合戦」(公演は終了)で、主人公の浪人・礼三郎(柚香光(ゆずかれい))に恋する料亭の娘おとみを演じた。礼三郎とお春(星風まどか)の恋路を邪魔する敵役だが、どこか憎めない。取り巻きたちを引き連れてぱたぱたと歩く姿が何とも愛らしい。  「かわいらしくしなきゃ、お嬢さま感を出さなきゃということに気を取られて、役をつかむのに時間がかかった」と明かす。稽古を重ねる中で「ただ意地悪な女の子じゃなくて、おとみにはおとみの思いがある。素直な心を大事にしよう」と気付き、自分に近い存在に感じられるようになった。今ではファンに「おとみちゃん」と声をかけられることも多く「いとおしくて仕方ない」と笑う。  次の出演はメリメ原作「カルメン」をモチーフに描かれた「激情」で、永久輝(とわき)せあ演じる主人公を愛するカルメンを演じる。「あこがれの役。愛することについて奥深い作品で、激しさや情熱を表現したい」と表情を引き締める。  入団5年目。コロナで新人公演が中止になる中、本公演以外の舞台でもヒロインを務めた。娘役として「愛を持って男役を見詰めたい」と語る。「寄り添うとか、すてきに見せようとするのではなく、純粋に男役を愛する。それが男役を輝かせることになり、娘役もすてきだなと思ってもらえる。一番難しいけれど、極めたい」 (石原真樹) ●● 三つの質問 ●●  (1)最近ハマっていることは?  -作品の勉強のために見たドラマや映画に気付いたらハマっています。今回の舞台ではNHK大河ドラマ。  (2)大切にしている言葉や、座右の銘は?  -「自信はなくてもいいから、自分を信じられるまで努力しなさい」。プレッシャーに押しつぶされそうなとき、尊敬する上級生からいただいた言葉。頑張ること、努力することが苦しくなくなりました。  (3)続けている健康法は?  -シリカ水。体の中が循環される感じがします。 <ほしぞら・みさき> (1)出身地=神奈川県鎌倉市 (2)出身校=横浜雙葉高校 (3)入団年=2019年 (4)愛称=みさき (5)趣味=読書 (6)特技=ピアノ  ※11月17日~12月12日の花組公演「激情」「GRAND MIRAGE!」(全国ツアー)に出演予定。

文化・エンタメ 東京新聞
2023年10月12日
<華宝塚>大人の色香漂う男役に 花組・侑輝大弥

<華宝塚>大人の色香漂う男役に 花組・侑輝大弥

 花組公演「鴛鴦(おしどり)歌合戦」(10月8日まで、東京宝塚劇場)は貧乏浪人と娘のじれったい恋の物語。2人が住む城下町で、町人たちに瓦版を配る瓦版屋鶴吉を演じる。  時代劇は初めて。演じる中で「場面を盛り上げたい」という気持ちと時代劇らしい動きがうまくかみ合わず、独特の所作を身に付けるのに苦労した。「瓦版を配る場面では、観客に物語の情報も伝えなきゃいけない。ただ楽しく場面が流れていかないように気を付けた」と語る。  レビュー「GRAND MIRAGE!」は「宝塚の男役のためのオーソドックスなダンスで、やっぱり一番かっこいい」と目を輝かせる。「技術も必要で難しくもあるけれど、挑めることが楽しい」  長年バレエを習い、舞台に立つ仕事がしたいと高校は舞台芸術に特化した学科に進学。授業で初めて宝塚の舞台と出合った。「華やかさと、唯一無二の男役。独特の世界観にひかれ」、夢中になった。  入団7年目の昨年「巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨(ほうこう)~」新人公演で初めて主演を務めた。舞台の中心に立ってみて、周囲の支えがどれほど心強いかを実感。「本公演で、自分も力になりたい」との思いが増した。目指すのは「ただそこにいるだけで大人の色香が漂う男役」という。「お客さまに褒められるところを大事にしつつ、自分に制限をかけずに可能性を見いだしたい」 (石原真樹) ●● 三つの質問 ●●  (1)無人島に何かひとつだけ持っていくとしたら?  -宝塚のDVD。これを見たら生きていけそう。他のことは自分で何とかします。  (2)「幸せだなぁ」と感じるときは?  -舞台上ではパレード(公演のフィナーレ)でお客さまを近くに感じる瞬間。オフでは、お布団に入った時。  (3)1週間休みがあったら何をしますか?  -海外に行ったことがないので飛び立ちたい。ニューヨークで観劇やレッスンしたり、ヨーロッパも巡りたい。 <ゆき・だいや> (1)出身地=埼玉県所沢市 (2)出身校=埼玉県立芸術総合高校 (3)入団年=2016年 (4)愛称=だいや、だいちゃん (5)趣味=海、空を見ること (6)特技=和太鼓  ※11月17日~12月12日の花組公演「激情」「GRAND MIRAGE!」(全国ツアー)に出演予定。

文化・エンタメ 東京新聞
2023年09月28日
なぜデンマーク人の英語力は30年で劇的アップしたのか。アメリカ人も驚く変貌ぶり、「まったく話せない」はわずか5%

なぜデンマーク人の英語力は30年で劇的アップしたのか。アメリカ人も驚く変貌ぶり、「まったく話せない」はわずか5%

北欧・デンマークに来て驚いたことの一つが、デンマーク人の英語力の高さだった。 以前、この連載で紹介した2人の日本人は、デンマーク語ではなく英語で仕事をしていたのだが、ビジネスの場で英語が使われる場面はかなり多い印象である。私が以前使っていたコワーキングスペースの場合、イベントの参加者にデンマーク語ネイティブでない人が混ざっていると、「じゃあ今日は英語にしようか」とイベント全体が英語に切り替わった。 外国人でも投票できる地方選挙では、聴衆に外国人が多い場合は、公開討論会が英語で行われていた。 私が暮らすのは首都のコペンハーゲンだが、英語が話せるのは都会の人に限ったことでもなさそうだ。田舎に住む夫の親戚も、60代くらいまでの人なら、程度の差はあれ英語でコミュニケーションができる。私の日常生活でデンマーク語が必須と感じるのは、3歳の息子と7歳の娘の友達が我が家にやってくる時くらいである(さすがに小さい子はデンマーク語しか話せない)。 そんな環境に甘やかされて、なかなか本腰を入れてデンマーク語を勉強するモチベーションが湧かなかったりするのだが、それは北欧全域の特徴でもあるようだ。 「フィンランド語、全然できません」と笑うのは、北欧のスタートアップ企業に投資するベンチャーキャピタル「NordicNinja VC」の代表パートナーで、2019年にフィンランドに家族で移り住んだ宗原智策氏である。 宗原氏はこれまで、英語が話せないスタートアップの経営者にも投資家にも会ったことがないと言い、英語だけで特に問題なく暮らしているそうだ。前職でメキシコに4年間駐在していた時に、日常生活でもビジネスの場でもスペイン語が必須だったのとは大きな違いを感じると言う。 実際、成人の英語力の高さを111カ国で比較した「英語能力指数」のランキング(2022年)では、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランドと北欧諸国はいずれも10位以内で「非常に高い」と位置付けられている(ちなみに、日本は「低い」にあたる80位)。 なぜ北欧にはこれほど英語が浸透しているのか。宗原氏は、中南米では周辺諸国もスペイン語を使うのに対し、北欧5カ国ではすべて現地語が異なるため、ビジネスの共通言語として英語が使われやすい、と指摘する。そして、もう一つ挙げる理由が「英語を使わないと、チーム作りで損をするから」である。 「スタートアップにしろVCにしろ、仲間作りが肝なわけですが、世界で勝負しようとすると、どれだけいい人材を集められるかが重要になる。その点、共通言語を英語にすれば、人材のプールが一気に増えるわけです」 北欧のスタートアップ企業は「ボーン・グローバル」と言われるように、初めから海外展開を視野に入れている。それぞれが小国で、国内市場の規模が小さいためだ。「解決しようとする課題の大きさはマーケットの大きさでもあり、課題が大きければ大きいほど、スタートアップが将来伸びる可能性も高い。北欧のスタートアップが気候変動やヘルスケアといったグローバルアジェンダに取り組むのは、そのためでもある」と宗原氏は解説する。 競争力のあるデンマーク企業の特徴として、ニッチに特化して高付加価値の商品やサービスをグローバルに展開しているという側面を連載で紹介したように、北欧の企業が国際市場を視野に入れているのは、スタートアップに限らない。 そんな組織を引っ張るトップも、英語力の高さは当然と目されているところがあり、国際会議などで積極的に発言して存在感を強めている。「デンマーク人は英語をストレスなく扱うので、ビジネスの幅が海外に広がりやすい」とは、現地企業で働く日本人の声だ。 で、英語がビジネスに有利なのは分かるものの、長年、英語に四苦八苦している日本人にとっては、どうやったらそんなに流暢になるのかが一番聞きたいところではないだろうか。 今回、1977年にデンマークに移住した米国人にも話を聞いたのだが、当時のデンマーク人は、英語で電話を受けると「少々お待ちください」と言って慌てて英語を話せる人を探していたそうなのである。 北欧はなぜ「幸福の国」になれたのか の記事一覧 エリンちゃんに初めて会ったのは、彼女が7歳の時だった。私がエリンちゃんの母親と友達になり、自宅に夕食に招かれた時のことだ。その後もたびたび家族ぐるみで会い、大人同士で英語で会話をしていたのだが、10歳になった頃から、エリンちゃんも英語で会話に飛び込むようになってきた。 以来、会うたびに英語力はめきめきと上がり、今回も英語で取材してみたのだが、よどみなく答えるので目を見張った。それでいて、英会話教室などに通っているわけでもないのである。 エリンちゃんは公立の小学校に通っており、英語を学び始めたのは1年生の時から。デンマークの英語教育は1970年代には5年生からだったが、段階的に前倒しとなり、2014年からは1年生まで開始時期が早まった。デンマークの幼稚園では文字の読み書きを教えないので、母国語であるデンマーク語と英語とを、ほぼ同時に学校で習い始めるわけだ。 ただ、エリンちゃんの英語力は小学校で培われたのかというと、そうでもない。 「学校の英語の授業のレベルは低過ぎて、新しいことは何も学ばない」と肩をすくめるので、じゃあどこで英語力を身につけたのかを聞いてみると、YouTubeやSnapchatの動画、映画やテレビといったエンタメを通じてなのである。 エリンちゃんが例に挙げたのが、ハリーポッターだった。「ハリポタの映画は全部で8本あるけど、最初の数本しか吹き替えになってなかったから、途中からは英語で聞くしかなかった」。 実際デンマークでは、小さな子ども向けの映画以外は、デンマーク語吹き替えにならない。英語の映画には字幕がつくのだが、文字が消えるのが早くて読むスピードが追いつかないことも多いといい、エリンちゃんは結果的に、言っているそばからすべて理解するようになったのだそうだ。 たしかに、エリンちゃんの英語能力のうち、断然に強いのは実用度の高いリスニングとスピーキングである。リーディングはそれほどでもないらしく、文章を読むのは学校の教科書くらいだそうだ。実用的な英語力を重視するのは、デンマーク人に一般的に見られる傾向である。 最近では、YouTubeなどの動画もよく見ている。「一時期ハマった」と言って見せてくれたのが、猿の赤ちゃんを保護して育てる英語圏の女の子のYouTuber。「デンマークって小さい国だから、面白い動画もないし、面白いYouTuberもいない。だから英語のYouTuberのを見てるの」 エリンちゃんの両親はともにデンマーク人だが、私のようなデンマーク語ネイティブではない友人が訪ねてくると、会話は英語に切り替わる。エリンちゃんが英語に慣れたのは、大人の英語での会話を聞いていたことも理由の一つだそうだ。 もう一つは、海外旅行。デンマークでは小学校に上がると、2カ月に1度くらいの頻度で、約1週間の休暇がやってくる。デンマークは国が小さく、旅行と言えば周辺国も含めた海外旅行になることも多い。エリンちゃんは旅先で、親に「これって英語でなんて言うの?」と聞きながら、自分のスピーキングを試していったそうだ。 そうやって少しずつ自信をつけ、今では、空手教室で知り合ったイタリア人やウクライナ人の友達と英語で話したり、メッセージを交換したりしているとのこと。 エリンちゃんは、同級生の間でも英語を話せる方だというが、それは「ミスを恥ずかしがるかどうかの違い」だと言う。 「多分みんな、話そうと思えば話せるけど、みんなの前で間違えるのが嫌な子は話さないだけ。私も語彙が見つけられなくて困ることはあるけど、ほかの言葉で言い換えられるはず、って思って話している」(エリンちゃん) ちなみに、英語以外の外国語教育としては、5年生でドイツ語かフランス語を選択する。エリンちゃんはフランス語を選択したものの、それほど得意というわけでもないらしい。また、周辺国のスウェーデン語やノルウェー語はデンマーク語に近いので、やろうと思えば習得は英語よりも簡単なはずだが、こちらも学校で数週間学んだ程度であまり分からないのだという。 デンマークとスウェーデンの間にかかる橋を舞台にした北欧ミステリードラマ『The Bridge』では、デンマーク人警官はデンマーク語で、スウェーデン人警官はスウェーデン語でと、異なる言語が混ざった状態で会話をしているのだが、実際に私も時々、こういった複数言語での会話を耳にする。ただしそれは、30〜40代以上くらいの年齢層の人の話で、若い世代では英語で会話する傾向になってきている。エリンちゃんも、スウェーデン人やノルウェー人と会った時には英語で話すのだそうだ。 ただ、デンマーク人が昔からずっと英語が話せたわけではなさそうだ。「デンマーク人の英語力は飛躍的に向上した」と証言するのは、結婚を機に1977年にデンマークに移住した米国人のチャールズ・フェロウ氏である。 移住当初、フェロウ氏は、首都周辺の公立学校の「ゲスト・ティーチャー」という立場で、英語の授業をネイティブスピーカーとしてサポートしていた。担当していたのは、公立学校の小学校5年生から10年生までの生徒たち。当時のデンマーク人にとって、英語とは学校で学ぶイギリス英語のことであり、単語も「elevator」(米国英語)ではなく「lift」(イギリス英語)という具合だった。英語教師の発音も「100%、イギリス英語だった」と言う。 ただ、英語の先生といえども会話は苦手だったそうで、デンマーク人の英語教師は、同僚の前でフェロウ氏と話すのを嫌がったらしい。フェロウ氏は、夕方にはビジネスパーソンにもプライベートレッスンで英語を教えていたが、レベルは決して高くなかったという。 コペンハーゲンで暮らしていると、今でこそ英語だけで問題なく買い物ができるし、英語しか話せないウェイターにも会うくらいなのだが、フェロウ氏の移住当時は、首都でも生活していくのにデンマーク語は必須だったらしい。 1980年代に入ると、ヒップホップ音楽など米国文化の人気の広がりとともに、英語も浸透していった。1970年代までデンマークのテレビ番組は公共放送「DR」一択だったのだが、1980年代後半からはケーブルテレビの普及により、米国や英国の番組が見られるようになったことも大きかったという。 特にフェロウ氏が、デンマーク人の英語力の転換点だったと振り返るのが1993年。この年の1月、デンマークを含む欧州の12カ国による単一市場が始動して「4つの自由(人、物、資本、サービスの移動の自由)」が認められ、同年11月にはEUが発足。加盟国で取得した学位が自国でも認められるという互換制度も始まり、海外で学ぶ人も増えた。ビジネスも国際化が進むとともに、大人の英語力の伸びも加速していった。 もともと、デンマーク人は言葉に関して、「自分の方が、相手に合わせる必要がある」という姿勢を身につけている。多くの人が同じように説明するのだが、「こんな小さな国の言葉(デンマーク語)を、外国人に話してもらえることを期待していない」という感覚がある。これは、英語圏やスペイン語圏など、メジャーな言語圏の国に住む人とは大きく異なるのだろう。 デンマーク人が英語力についてよく言うのが、「デンマーク人の英語力が高いのは、吹き替えがないから」という理由である。そして、吹き替えがあるドイツと比較しながら「だからドイツ人は英語がうまくない」と付け加える。 確かに、英語力ランキングではトップの常連であるオランダや北欧諸国に特徴的なのは、テレビや映画などの英語音声を吹き替えにせず、字幕をつけて放映してきた点である。英語音声を自国の言語に吹き替えするかしないかが、その国の英語力に関連するという研究もある。 青少年向けメディア団体などによると、デンマークで音声吹き替えされるテレビ番組や映画はだいたい7〜10歳向けくらいまで。それ以上の年齢層を対象としたコンテンツは、字幕で十分と判断されるそうだ。 なぜ吹き替えがされないのか。コペンハーゲン大学のドーテ・ルンスマン准教授は、小国ではマーケットが小さく、吹き替えのコストに市場規模が見合わないことが一因と説明する。 そして、吹き替えという習慣がなかったため、外国語のコンテンツはそのまま聞くのが自然、という感覚が身についているそうだ。例としてルンスマン氏が挙げたのが、2021年に行われた米国のバイデン大統領の就任式である。 就任式は、デンマークのテレビ局でも生中継されたのだが、公共放送「DR」はデンマーク語の同時通訳者の声をかぶせる形で放送したため、「なぜオリジナルの音声を聞けないのか」という不満の声がテレビ局に殺到。批判を受けてDRは、「次の大統領就任式では視聴者が同時通訳なしでオリジナル音声を聞ける選択肢を用意します」と表明するに至った。それほど、吹き替えへの拒否感が強いらしい。 ルンスマン氏によると、デンマークで英語力に関する大規模な調査が初めて行われた1995年の時点で、「最寄りのバス停への道順とバスの行き先について、英語で説明できるか」という質問に「まったくできない」と答えた人の割合は17%だけだったという。どこで英語に触れているかを尋ねたところ、ほとんどの人が「字幕付きの英語の映画やテレビ」と答えたそうだ。 ちなみに、2022年に同じ質問をしたところ、この数字は5.5%まで減った。つまり、デンマーク人の約95%は、程度の差こそあれ、バス停への道案内と行き先の説明が英語でできるというわけだ。「まったくできない」と答えた人の多くは、地方に住む高齢者だったそうである。 ちなみに、英語力を年齢層によって測ったグラフがこちら。若ければ若いほど英語力が高い傾向があるが、1995年の時点と比べると、2022年では、20代と60代前半までの差がかなり縮んだことが分かる。田舎の親戚でも、60代くらいまでならだいたい話せる、という私の肌感覚を裏付けるようなデータである。 「デンマークで英語が浸透したのは、英語が『価値ある言語』としての地位を築いたことが大きい」とルンスマン氏は指摘する。 英語を学ぶ動機は、その昔は、ポップ音楽やコンピューターなどサブカルチャー的な文脈だったが、これがビジネスにも広がり、今の子どもたちにとってはYouTubeやSnapchatといったソーシャルメディアやオンラインゲームも大きい、とのこと。「学校で学ぶ英語は依然として重要ですが、英語の社会的な地位と人気の理由を考えると、学校教育という“公式ルート”以外の存在が大きい」と指摘する。 確かに、現在のデンマークでは、イギリス英語をほとんど耳にしない。これも、エンタメやビジネスといった、国際共通語としての英語が普及している証拠なのだろう。 というわけで、読者のみなさん。子どもに英語を身につけさせたいなら、まずは英語圏の面白いYouTuberを見つけるところから……。 デンマークに移住したら、労働時間は減って収入はアップ。秘訣は「三遊間のボールは拾わない」働き方 北欧の小国デンマークはなぜ経済競争力1位になれたのか? 「高付加価値の極み」に特化して価格100倍を実現 デンマークの独身3人に聞く、あなたにとっての成功・幸せとは? 「機能している社会」を肯定的に捉える若者たち 井上陽子(いのうえ・ようこ):北欧デンマーク在住のジャーナリスト、コミュニケーション・アドバイザー。筑波大学国際関係学類卒、ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。読売新聞で国土交通省、環境省などを担当したのち、ワシントン支局特派員。2015年、妊娠を機に首都コペンハーゲンに移住し、現在、デンマーク人の夫と長女、長男の4人暮らし。メディアへの執筆のほか、テレビ出演やイベントでの講演、デンマーク企業のサポートなども行っている。Twitterは @yokoinoue2019 。noteでも発信している(@yokodk)。

経済 Business Insider Japan
2023年05月10日
「自分一人の幸せを求めるなら結婚しなくていい」タサン・ロマンさんが日本の夫婦関係に抱く違和感

「自分一人の幸せを求めるなら結婚しなくていい」タサン・ロマンさんが日本の夫婦関係に抱く違和感

自分たちの夢を実現している夫婦にパートナーシップを10の質問で探る「だから、夫婦やってます」。3回目の後編は「伝説の家政婦」として知られるタサン志麻さんの夫で、フランス出身のタサン・ロマンさん。 テレビや雑誌で一躍時の人となった志麻さんと共に歩んできた夫、ロマンさんから見た夫婦の転機や危機、そして日本人夫婦たちへのメッセージとは。 —— 出会いのきっかけと結婚の経緯は? 僕が日本に来たのは2013年の6月、19歳の時でした。子どもの頃から日本のアニメが大好きで、日本語をちゃんと勉強したいと思って学生ビザで来日したんです。 日本に来る前はフランスで電気工事やリフォーム関係の仕事をしていたので、海外向けの事業も始めようかなと計画をしていたんです。 翌年の春、生活費を稼ぐために始めたアルバイト先の飲食店で出会った“ボス”が志麻。まさか日本で結婚して、こんなに長く暮らすことになるとは思わなかったね。 志麻の第一印象は……仕事にも厳しく、自分の意見をハッキリ言うけど、気持ちがいい女性。日本人の女性は男性に遠慮をして言いたいことを言わない人が多いから珍しかったし、魅力的に感じられた。僕は子ども時代にお父さんがいない家庭で育って、お母さんは強い存在だったから、強い女性が好き。 志麻と週に3日くらい顔を合わせているうちに、出会って1カ月経つ頃には好きになっていました。 —— なぜ「この人」と結婚しようと思ったのですか? 一緒にいると、楽しいから。ずっと一緒にいたいと思ったから。周りはみんなびっくりしたよ。でも、家族はいつも僕の意思を尊重してくれるから、結婚には大賛成。お姉さんは「私より結構年上ね」と笑っていたけれど、それだけ。 15歳の年齢差もまったく気にならなかった。年齢や国籍の違いよりも、大事なのは愛。 むしろ、日本人は実年齢より考えや話し方が幼い人が多いなと感じることもあったから、若い子や同世代にはあまり興味を持てなかったですね。志麻は自分の考えをしっかりと持っているし、それまでものすごく努力してきた人だから尊敬できたし、ずっと話していても飽きなかった。 「余計な男のプライドは手放した方がいい」こんまりメソッドのパートナー、川原卓巳さん支えた妻の言葉 —— 日頃の家事や育児の分担ルールは? 「カジ」ってどういう意味だっけ? ああ、料理とか掃除とかのこと? できることをやればいいんじゃない? できないことがあればやり方を聞けばいいんじゃないかな。 僕は子どもの頃に母親とお兄さん、お姉さんと4人暮らしで、「自分のことは自分でやる」のが当たり前の環境で育ちました。10歳から12歳までは、節約のためにお昼休みに学校から帰宅して、自分でランチを作って食べていたし。洗濯も掃除も子どもの頃からやっていたから、何も言われなくてもやるのが普通になっちゃった。 僕が特別なのではなくて、フランス人にはそういう人が多いと思いますよ。それに志麻を愛しているから、少しでも助けになりたいからね。 一番得意な家事は子どもと遊ぶこと。志麻が遅く帰ってきた日や「今日は作りたくない」と言ったときは、僕が料理を作ります。レパートリーは、フランスの家庭料理か居酒屋料理が中心で、焼きそばやチャーハン、カレーライスは子どもたちもよく食べてくれます。 でも、志麻は厳しいよ(笑)。「塩足りないよ」「ベタベタだよー」とかよく言われちゃうね。でも、何をしたらいいのか教えてくれると次のチャレンジに活かせるから大歓迎。でも、また新しい文句が出るんだけどね(笑)。満点をもらったこと? 一度もないね(笑)。でも楽しいよ。 フランスの味を再現したくて珍しいチーズを買うと、「これ使い切らないといけないじゃん」と怒られるし、洗濯物に関しても何度怒られている。でも、クレームはすぐに言い合えば、大喧嘩にならない。志麻がイライラしていても、僕は気にならない。 そんなやりとりも含めてコミュニケーションが楽しいから。志麻は真面目な性格だから、頑張りすぎて倒れないかがいつも心配。ちょっとふざけて邪魔して、志麻の力を抜くのが僕の役目だね。 家事分担については、海外と比較して日本の女性はかなりやってくれるほうだから、男性が積極的に手伝うくらいでバランスがとれると思う。 —— 子育てで大事にしている方針は? 思うことを言える人に育てる。好きなこと、嫌いなこと、食べたいもの、なんでも思ったことを口にして、その理由まで説明できるように。 思うことを言えるようになるのが、なぜ大事なのかって? ロボットのような大人になってほしくないから。子どもたちには、自分の意思を創って、自分の意思を伝えられる大人に育ってほしい。 日本で買い物をするときに店員さんを見ていると、すごく礼儀正しいんだけれど、教えられたマニュアル通りの挨拶であまり心がこもっているように見えないこともある。日本には美しい言葉を持つ素晴らしい文化があるのだから、心を込めて伝えたほうがいいと思う。自分の思ったことを、自分らしく表現してコミュニケーションするほうが、お客さんも喜ぶはず。 教えられたことを超えられる人間になることが、どんな仕事でも大事だと思うから、子どものうちから自分の意思を伝える練習をさせておきたいんです。 夫婦関係でも同じ。言いたいことを溜めずに言う。でも、単なるわがままはダメで、拒否する理由もセットで伝える。「ごめんなさい」も、謝る理由を説明できないのなら言わないほうがいい。こういうふうに説明していると、1歳の子どもでも理解してちゃんとできるようになっていくんですよ。 最近、3歳の長男は「パパのパスタ、塩が足りないよ」とか言うようになって、ちょっと悲しいけどね。でも、確かにあの時は味がなかったね(笑)。 —— お互いの自己実現を支援するために、大切にしてきたことは? シンプルに、お互いの夢を応援する気持ちが大事。「フランスの食卓文化をたくさんの人に伝えたい」という志麻の夢は知っていたから、家政婦として注目されてテレビや雑誌に出て急に有名になったときも、「今は志麻の夢を応援するときだ」と思って、僕は彼女を支えたいと思った。 「人気は何年続くかわからないし、1カ月で終わるかもしれない。だったら、今は志麻が思い切り仕事に集中できる環境をつくろう」と、自分のキャリアは優先しないと決めた。僕がそうしたいと心から思ったから。 忙しくなり過ぎて、志麻が悩み始めているのに気づいたときには「メディア出演をやめたくなったら、いつでもやめたらいいよ」と伝えた。その時々で、自分たちの気持ちに正直になって、やりたいことをやればいい。志麻の料理を僕がデリバリーする仕事もできるし、志麻が100%休んで僕が働くことだって、なんでもできるんだから。 だって結婚するってそういうことじゃないの? 自分一人の幸せを求めるだけなら結婚しないほうがいいでしょう。愛する人と結婚したからには、お互いに応援するものだと思っています。 —— 夫婦にとって最もハードだった体験は? それをどう乗り越えましたか? 結婚の前の大喧嘩。理由は……言わない(笑)。でも、本当に別れるかもしれないくらいのピンチだった。僕は志麻と離れたくなかったから、夜通しずっと話し合った。全部さらけ出して、志麻も自分のことを話してくれて、その一晩のうちに「僕が一緒にいたいのは志麻だけだ」と思った。 —— パートナーから言われて、一番うれしかった言葉は? 志麻の言葉ならなんでも嬉しいんだけど、「結婚しよう」と言った時に「いいよ」と返してくれたのが一番かな。 —— これからの夫婦の夢は? 自分の夢は、今は特にないね。家族が毎日楽しく過ごせて、子どもがよく育ってくれればいい。 あとは、家族が暮らす家をちゃんと直したいな。もう少し広い家を借りてもいいし、志麻がゆっくり休めるような部屋を手作りしたい。志麻がハッピーであることが僕の一番の希望です。 —— 日本の夫婦関係がよりよくなるための提言を。 ちゃんと話す。おしゃべりをしましょう。「何を話せばいいの?」とよく聞かれるけど、なんでも思ったことを口にすればいいと思う。僕は車を運転しながら、流れてきた音楽からふと思い出した13歳の頃の出来事をずーっと話したりしている。 スキンシップも大事。出かける時と寝る前のキス。妻が先に寝ていても、妻の頭にキスをしよう。一緒に暮らす女性を“自分の妻”と考えず、出会った時と変わらない“一人の女性”だと考えて尊重しよう。自分の母親ではない女性を「ママ」と呼ぶのは言語道断。自分が愛した女性の名前を呼びましょう。 そうそう、日本人の夫婦は子どもができるとすぐに「パパ」と「ママ」になっちゃうんだよね。それはよくないと思う。子どもも大事だけれど、親になる前の恋人関係を変える必要はないと思う。 あとは、やっぱり日本人の男性たちは働き過ぎだと思う。仕事も大事だけれど、毎日遅くまで働いて上司の顔色を伺うよりも、早く家に帰って、夫婦で一緒に過ごそう。会話があまりなかったとしても、隣に座って映画を一緒に観るだけでもいい。 それができないくらい仕事が忙しかったとしたら、仕事を変える選択肢も考えていいと思う。それは僕自身も経験したことで、長男が生まれた頃は居酒屋で朝5時まで働いて、帰宅したら子どもの保育園の準備をして、志麻を仕事に送り出して、15時まで寝てすぐにまた出勤する生活。すれ違いで超苦しかった。 2人で子育てをしたかったし、家族の時間を何より大事にしたいから、飲食店を辞めて、ウーバーイーツとかコンビニとかで時間の融通のきく仕事をしながら、子育てを優先する働き方に変えた。仕事なんてやろうと思えばいくらでもある。「できない」じゃなくて「やろうとしていない」だけだと思うな。 ついでに言うと、子育てを女性だけに押し付けるなんて失礼。子どもは夫婦でつくるものなんだから、2人で育てないと。男だけ好きに仕事をして、女性が自分の夢を我慢するなんておかしい。2人の夢が実現できない関係なら、結婚しないほうがいいんじゃない。 夫が16時間働くのではなく、8時間ずつ夫婦で働く生活に変えたら、それだけで夫婦で話す時間増えるはず。きっと子どもも増えるよ。生意気に聞こえたらごめんなさい。 —— あなたにとって「夫婦」とは? 僕にとって結婚は、「志麻とずっと一緒にいたい」という誓い。フランスでは法的に結婚している夫婦と未婚のカップルにはほとんど違いがないから、結婚するかどうかは形だけの違い。結婚したからといって、恋人が妻に変わるわけでなく、関係性も変わらない。 でも、結婚するという決意によって、「あなたと死ぬまで一緒にいたい」と意思表示になるから、より深く愛を伝えられる。5年後も10年後も、変わらず愛し合える2人でいたいです。 (妻のタサン志麻さん編はこちら▼) 伝説の家政婦・タサン志麻さん、フランス家庭に学んだ「家が一番素直になれる場所」であるために 「僕たち夫婦は何百時間と沈黙の時を過ごしてきた」CRAZY社長・森山和彦さん語る対話の重要性 「余計な男のプライドは手放した方がいい」こんまりメソッドのパートナー、川原卓巳さん支えた妻の言葉 【タサン志麻1】「予約の取れない伝説の家政婦」。彼女の料理はなぜ家族を幸せにするのか

経済 Business Insider Japan
2021年03月26日
「ホットドッグを値上げしたら殺す」コストコの創業者が現在のCEOに語っていたこと

「ホットドッグを値上げしたら殺す」コストコの創業者が現在のCEOに語っていたこと

コストコは1985年からドリンク付きのホットドッグを1.50ドル(約158円)で販売してきた。 ツイッターでは、あるユーザーが2018年のMental Flossの記事のスクリーンショットを投稿したことで、ホットドッグがなぜこの値段なのか、コストコの創業者ジム・シネガル(Jim Sinegal)氏の"過去の言葉"が再び注目を集めている。 コストコの現在のCEOクレイグ・ジェリネック(Craig Jelinek)氏が当時CEOだったシネガル氏にホットドッグの値上げを相談すると、シネガル氏は「あのホットドッグの値段を上げたら、お前を殺すぞ。どうにかしろ」と答えた。 2009年、ジェリネック氏は本当に"どうにかした"。コストコは、長年にわたってホットドッグを供給してきたHebrew Nationalを使うのを止めて、ロサンゼルスにカークランドシグネチャーのホットドッグ工場を建設した(のちにシカゴにももう1つ工場を作った)。新しい工場によってホットドッグの生産コストが削減され、コストコは1.50ドルで売り続けることができた。 ジェリネック氏は2018年、1.75ドルに値上げしても、客はホットドッグを引き続き買うだろうと考えていたと、425Businessに語った。 「(値上げは)大したことではなかっただろう。人々はそれでも(ホットドッグを)買っただろう。ただ、コストコと言えば、1.50ドルのホットドッグだと人々は考える」 シネガル氏は2012年に引退し、ジェリネック氏がCEOを引き継いだ。ホットドッグの人気は高まるばかりだ。コストコは2019年、1億5100万個、金額にして約2億2650万ドルのドリンク付きホットドッグを販売した。1月の株主総会でジェリネック氏は、ホットドッグを値上げするつもりはないと語った。 「あのホットドッグを1.50ドル以上にするつもりはない。そういうことだ」 コストコが"まとめ買いのパラダイス"であることを証明する21の商品 隔離生活に最適? 新型コロナウイルスのパンデミックで、ホットドッグの売り上げが伸びている [原文:Costco's founder once told the company's current CEO, 'if you raise the [price of the] effing hot dog, I will kill you'] (翻訳、編集:山口佳美)

経済 Business Insider Japan
2020年09月28日