東京高裁が28日の判決で、大川原化工機事件の捜査の違法性を断じた。控訴審で証拠提出された経済産業省と警視庁公安部との打ち合わせメモからは、経産省側の懸念に耳を貸さず、逮捕へと突き進む公安部の強引な捜査の実態が浮かぶ。立ち止まる機会があったのに「無理筋」な捜査を続けた結果、冤罪(えんざい)事件が生まれた。(小野沢健太、西川正志)
大川原化工機への捜査を巡る訴訟の控訴審判決を受け、記者の質問に答える大川原正明社長(左から3人目)ら=東京・霞が関の東京高裁前で
◆経済産業省側は当初、警視庁の考えを否定していた
「警部、警部補レベルではどうにもならない。警察の上層部から経産省にお願いをしたと認識しています」
2024年10月、東京高裁の法廷で、輸出規制を所管する経産省との打ち合わせを担当した元公安部捜査員の現職警察官が、淡々と証言した。大川原化工機の機械は規制の対象と言えるのか。捜査はスタートから難航していた。
メモによると、公安部と経産省は2017年10月〜18年2月、計13回の打ち合わせを重ねた。経産省の担当者は当初から、規制の定義があいまいなことに懸念を示し「警察の実験方法は一般的ではない」などと否定的な見解だった。公安部の説明に「警察に都合の良い事実のみを経産省に伝えているのではないか」と激高する場面もあった。
2018年1月には「これ以上、係員レベルで話をしても平行線」。同2月2日には「警察が滅菌、殺菌できるということを満たしていない」と、規制対象に該当しない趣旨の発言もあった。
◆何かが起きた? 経産省が捜査容認に一転
その6日後の打ち合わせになると、経産省は一転して家宅捜索することを「問題ない」と容認。一方で、捜索で得た情報に基づく別件での事件化を望むなど、後ろ向きな姿勢は崩さなかった。
この間に何があったのか。法廷で問われた警察官は、当時の上司が「もうどうにもならないから空中戦をやってもらうしかない」と話していたことを明かし、公安部長が経産省に圧力をかけたと推測した。
経産省の容認から約2年後、公安部は大川原化工機の社長ら3人を逮捕。この警察官は法廷で「(捜査の)決定権を持つ人の欲なんでしょう」と捜査方針への不信感をあらわに...