外出先で突然生理になったが、生理用品を持ち合わせていない――。そんな女性たちの困り事を少しでも解消しようと、大阪大の教授や学生たちが大阪・関西万博のトイレ内に生理用品を無償提供する専用ボックスを設置している。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる万博会場から、どのような未来を描くのか。
専用ボックス(高さ40センチ、幅30センチ、奥行き15センチ)は段ボール製で、2種類の生理用ナプキンと、タンポンを用意。ボックスの上部から補充して、下から一つずつ取れる仕組みのため、停電時でも利用できる。万博会場では、民間企業の協力を得て「大阪ヘルスケアパビリオン」や「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」などスタッフ専用を含む9カ所のトイレに導入されている。
専用ボックスを設置したのは大阪大の「MeW Project(ミュー・プロジェクト)」。2021年に活動を開始し、設計・デザインも担当した。22年からは、大阪大が必要経費を全額負担する形で、全キャンパスの女子トイレや多目的トイレに置かれている。
学生を対象にした利用者アンケートでは「生理用品にアクセスしやすくなった」「生理のつらさを共感してもらっているような、温かい気持ちになった」と設置に好意的な声が大半を占める。
現在では、全国の大学や高校などに5000台が設置され、活動が広がっている。24年1月に発生した能登半島地震でも、避難所に58台の専用ボックスを提供した。
プロジェクトのメンバーで、大阪大大学院人間科学研究科の杉田映理教授は「生理用品がなかったために、経血が椅子や洋服についてしまって学校に行きたくなくなるケースも実際に起きている。全ての女性の尊厳を守る意味でも、専用ボックスを設置することが重要」と指摘する。
だが、活動が広がるとともに予算面での課題が浮かび上がってきた。
大阪大との設置交渉を担当する大阪大企画部ダイバーシティ推進課によると、23年度に学内の専用ボックスに用意された生理用品は10万個以上にのぼる。同課の担当者は「生理用品の値上げなどで必要経費も上がり、さりげなく予算の削減を持ちかけられることもある。それでも必要なものだと訴え続けるのは大変だが、啓発イベントなどを通して事業への理解を深めたい」と話す。
生理用品を巡る世界の動きを見ると、カナダやオーストラリア、インドなどは生理用品に対する課税を既に廃止。英スコットランドでは22年8月に生理用品の無償提供を学校や自治体などに義務づける法律が世界で初めて施行された。
日本でも、生理に対する社会の支援が広がりつつある。
内閣府の調査によると、無償配布などの支援制度を導入している自治体は、21年5月時点で255カ所だったが、24年10月時点では926カ所と4倍近くまで増加。同年末時点で、生理用ナプキンを災害備蓄品に含めている自治体は、全国1741市区町村の88・9%に上る。
4月下旬には、プロジェクト主催で専用ボックス設置への理解を促すイベントを万博会場で開催。参加した大阪市此花区の会社員、宅野正紘さん(47)は「トイレに生理用品を置いてほしいという女性の声も、それが難しいことも初めて知った。男性も認識することで社会の動きも進むと思う」と話した。
イベントで登壇した杉田教授はこう語った。「1970年の大阪万博では、テレビ電話が『未来のもの』として展示され、今では当たり前に使えるものになった。同じように生理用品も当たり前にトイレにある未来になってほしい」【中村園子】