遊びながら化学を 高校生がカードゲーム開発、会社設立し全国販売へ

社会 毎日新聞 2025年05月29日 08:15
遊びながら化学を 高校生がカードゲーム開発、会社設立し全国販売へ

 苦手な化学を楽しく学びたい――。滋賀県立虎姫高校(長浜市宮部町)の生徒有志が遊びながら化学の分子量や構造式を覚えられる対戦型オリジナルカードゲーム「ChemiStrategy(ケミストラテジー)」を開発した。4月から150セットを県内高校向けに販売したところ完売。全国普及に向けて、生徒自らが今月27日に合同会社を設立し、6月から一般販売する。

 カードは分子量や沸点、構造式などが記された分子カードと、実験器具や化学反応が描かれたラボカードがある。分子カードを互いに出し合って、分子量の多さで数比べをするシンプルなゲーム。しかし、勝利条件を分子量から沸点に変更したり、化学反応で分子量を増やしたりできるラボカードを併用することでゲームに戦略性が生まれる。例えば、分子カードの「ブタン」(分子量58)にラボカードの「塩素」(置換反応)を使用すると分子量が35増えて93になる、といった具合だ。

 ゲームにはchemistry(化学)とstrategy(戦略)を掛け合わせて名付けた。ルールの設定を変えることで、対戦時間や難易度の調整ができ、小学生でも楽しめるという。

 開発のきっかけは化学担当の堀浩治教諭が自宅で教材を準備していた時、当時中学3年生だった長女明日香さん(2年)が「これでカードゲームを作ればおもしろそう」とつぶやいたことだった。明日香さんが虎姫高校に入学したこともあり、つぶやきをヒントに堀教諭が昨年6月、科学のカードゲーム製作をテーマとする特別講座を始めた。

 講座に集まった生徒がさまざまなアイデアを出し合って、ケミストラテジーを考案。試作品を作っては、授業や学校行事などでテストを重ね、今年1月にようやく完成形となった。明日香さんは「0から1にしたのは私かもしれないけれど、1から100にしたのはみんなの力です」と振り返る。

 昨年7月には県教委の「しがアントレプレナーシップ(起業家精神)育成プログラム」で助成金を得たり、高校生ビジネスプラン・グランプリ(日本政策金融公庫主催)で全国ベスト20に入賞したりするなど、取り組みは学外からも高い評価を受けている。

 今月22日には開発メンバーが指南役となり、JR長浜駅前の高校生・大学生が家庭や学校とは違う交流の場として利用するサードプレース「itteki」で体験会を開いた。初めて体験する高校生を含め14人が参加し、3回ゲームを行った。最初は少し戸惑っていた生徒たちも2回目にはすっかり慣れて、歓声を上げながらゲームを進めていた。「すぐにルールが分かる」「このカードなら勝てるかもと考えながら出すのがおもしろい」「やっぱり勝つとすごく楽しい」などさまざまな感想が出た。

 今後、小中学校への出張授業や生物カードの製作、他校とのカードゲーム大会実施など、新たな構想も次々に湧いている。

 ケミストラテジーの一般発売に当たって、生徒は合同会社「Chemi-Shiru」を設立した。開発メンバーのうち5人が参加し、リーダーの宇野春菜さん(3年)と明日香さんを代表社員として事業を進める。一般販売では、デザインを少し見やすく改良。6月以降、インスタグラムやホームページを通じて1セット1500円(送料別)で販売する。宇野さんは「娯楽というより教材として使ってほしい。普及させて化学への苦手意識をなくしたい。大学受験の共通テストで化学を受ける人の10%に使ってもらいたい」と目標を立てている。【長谷川隆広】

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