企業で広がるニューロダイバーシティー 心理的安全性の構築カギ

社会 毎日新聞 2026年04月08日 16:00
企業で広がるニューロダイバーシティー 心理的安全性の構築カギ

 発達障害など、脳や神経に由来する特性の違いを多様性ととらえて尊重する「ニューロダイバーシティー」という概念を、人材戦略に取り入れる企業が増えつつある。ヤマハ発動機(静岡県磐田市)もその一つだ。

 「性別や年齢と同様に、脳の特性も多様性の一つだ」。2025年12月に開かれた社内研修会で、ニューロダイバーシティーに詳しい臨床心理士の村中直人さんはこう理解を求めた。約300人の社員が参加した。

 村中さんはセミナーで、注意の向け方や集中の仕方、記憶や感覚など認知スタイルや情報の受け取り方には個人差があり、この違いを尊重する考え方をニューロダイバーシティーと呼ぶことを紹介。

 物の見方や発想が異なる認知的多様性を尊重し、安心して働ける心理的安全性を構築していくことが大切だという。

 村中さんは「企業では、画一的に人材を積み上げる『レンガモデル』でなく、異なる特性を組み合わせて強さを生み出す『石垣モデル』への転換が必要だ」と訴えた。

 他にも24年12月の社内研修会では、発達障害のある人の感覚などを体験する仮想現実(VR)装置を取り入れた。ゴーグルを付けて、聴覚過敏で会話が困難になる状況や、ADHDの特性の一つである不注意によってケアレスミスしてしまう状況などを体験する。

 VRコンテンツの企画開発をしている「シルバーウッド」(千葉県浦安市)が、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)の人へのインタビューを基に作製。担当の黒田麻衣子さんは「文字や口頭では伝わらないことをVRで感じ取り、相手の状況を想像できるようになることを目指している」と説明する。

 この研修会には、ヤマハ発動機の管理職ら76人が参加した。参加後のアンケートでは、「障害や特性に悩む当事者の視点から、周囲の影響やストレスの大きさを理解した」「『人は皆同じではない』という意識を持ち、偏見なく受け入れる姿勢を大切にしたい」などの感想が寄せられた。

 研修会を企画したヤマハ発動機グローバル人事部の安藤桃子DE&I推進グループリーダーは「周囲に特性を持った人がいるかもしれないと思ってほしい。多様な特性にかかわらず、その人の価値を発揮できる職場を作りたい」と意気込む。

 自身の転職経験から、障害者や性的少数者(LGBTQなど)に対する理解や感度は企業差が大きいと感じている。一般的な座学や冊子を通じた啓発には限界を感じ、VRや参加型ワークショップなどを採用した。

 「職場環境の改善という人事の観点から、次は『多様な人材の意見をいかに我が社の製品に反映できるか』が大切になる。反映できるようになれば、社会への波及効果も出てくる」と意義を語る。【渡辺諒】

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