決められないWTOに風穴?

政治 産経新聞 2026年04月11日 14:00
決められないWTOに風穴?

「関税」をこよなく愛するトランプ米大統領が、あらゆる国・地域に相互関税を発動してから1年が経過した。相互関税自体は連邦最高裁から違法とされたが、トランプ氏は高関税路線をやめない。自由貿易の秩序は毀損(きそん)されたままである。

例えば、世界貿易機関(WTO)の基本原則であり、関税などでの最も有利な扱いを加盟国に等しく与えるよう求める「最恵国待遇」は、米国がディールで国ごとに関税の差をつけ、相手国には対米関税の優遇を要求する中ですっかり色あせた。残念ながら、WTOはこれらに歯止めをかけられていない。

もっとも自由貿易の守護者たるWTOの「限界」はかねて指摘されてきたことでもある。二審制が機能不全状態の紛争解決制度など、WTOには多くの懸案があるが、意思決定のあり方という根本的問題もある。加盟166カ国・地域のうち1つでも反対があれば合意できないコンセンサス方式をとるので、新たなルール作りがなかなか進まないという問題だ。要は、決められない組織なのである。

実は最近、この問題に関連する興味深い動きがあった。カメルーンで3月下旬に開かれたWTO閣僚会議の際、日本を含む66の有志国・地域が、デジタル貿易の共通ルールを定めた電子商取引協定の暫定的な発効で合意したことだ。WTOで協議してきた協定を、有志国のみで実施に移すのは初めてである。

協定の中身は、日本が共同議長を務める有志国の枠組みで2年前にまとめた。これをWTO全体のルールとするよう協議しているが、インドなどの反対が強く全加盟国の合意を見通せない。現状を打開するため、まずは有志国のみで先行して実施することにしたというのだ。

コンセンサス方式の弊害に風穴をあけるための「全く新しい取り組み」(政府筋)である。こうした試みを広げることは意思決定のあり方を見直す上での重要な布石となり得よう。

経団連が昨秋提起したWTO改革案にも同様の問題意識がある。WTOとは別に有志国による貿易投資クラブを作り、そこでまとめたルールをWTOに落とし込むことなどが柱だ。経団連はWTO閣僚会議に際してもこの改革案を訴えている。

大事なことは、自由貿易体制が揺らぎを見せる中、WTOの存在意義を再び高められるかどうかだ。日本はそのための改革の先頭に立つべきである。

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