自民党は12日の党大会で、高市早苗首相(自民総裁)が2月の衆院選で掲げた「国論を二分する政策」を着実に進めいくと訴えた。衆院選で大勝後も首相は高い内閣支持率を維持しており、憲法改正に象徴される戦後日本が抱えてきた課題を「大転換」する推進力を得た。ただ、自民の支持率は頭打ちで、首相への高い期待値を地に足の着いた党への支持に転換できるかが問われている。
12日に東京都内のホテルで開かれた党大会冒頭、首相が衆院選の街頭演説で政策を訴える映像が始まった。首相は選挙直後の党両院議員総会で、衆院選公約について「暗記するまで読み込んで」と語ったが、党大会でも政策実現に言及した。党勢回復のカギは、有権者との「約束」を成し遂げる以外にないとの自覚が首相にあるからだ。
「大切なことは自民が衆院選で掲げた政権公約、国民との大切な約束である政権公約にある政策を1つひとつ実現していくことだ。いくつ公約を実現できたかが、来年の統一地方選、再来年の参院選への信頼につながる」
首相は12日の演説で、70年前の立党宣言に盛り込まれた「自主独立の権威の回復」という言葉に触れながら、衆院選で訴えた「強い経済」「強い外交・安全保障」といった公約実現が党勢回復への道筋と訴えた。とりわけ首相が強調したのは党是である憲法改正の実現と、安定的な皇位継承を確実にするための皇室典範改正だった。
先の衆院選での自民大勝の勝因は首相の人気にあやかった面が強い。6年衆院選と昨夏の参院選の2回の国政選挙の敗因のひとつは、長年自民を支えてきた岩盤保守層がリベラル色の強い岸田文雄、石破茂両政権に嫌気がさしたからという指摘もある。昨年に続いて、今年も原点回帰が強調されているのは、こうした危機感があるからだ。
実際、首相への支持を党の支持に転換できていない状況は世論調査の数字によく表れている。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が3月14、15両日実施した合同世論調査では、高市内閣の支持率は67・1%。昨年10月の政権発足以来6回目の調査で初めて7割を切ったが、依然として高水準を維持する。
一方、3月調査での自民支持率は前回比7・6ポイント減の31・8%で、わずか1カ月で衆院選での「ご祝儀相場」は剥落した。現在の水準は石破政権より持ち直したが、派閥パーティー収入不記載事件で国民の猛批判にさらされた岸田政権の末期と変わらない。
8年の党活動方針には「信頼回復、党勢回復は道半ばである」と明記したが、党の足腰は決して盤石ではないのだ。
党勢回復には「日本らしい日本の保守主義」(8年活動方針)という保守政党としての原点に立ち返る必要があり、象徴が戦後手つかずのままだった憲法と皇室典範の改正となる。党大会前、首相側近は「自民は何がしたいのかわからない政党といわれてきたが、今回はどういう政党なのかを打ち出せるかどうかが大事になる」と話していた。
国会は衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」に直面しているが、衆院選では自民単独で3分の2以上の議席を確保した。憲法改正の実現について、首相は「発議に何とかめどが立ったといえる状態で来年の党大会を迎えたい」と語り、国会での議論を加速させると強調した。皇室典範についても早期改正に意欲を示す。
首相が長期政権を目指すならば選挙に勝ち続ける必要があり、来春の統一地方選に加え、2年半後の参院選の勝敗が焦点となる。
ある参院幹部は「高い支持率で、自民を引っ張ってくれている首相は参院にとっても大事だ。このまま続けてもらい、2年後の参院選に勝たないといけない」と話す。
「重要な政策転換」を実行し、自らの人気を党の支持に結びつけるには実績を積み上げる以外にない。首相だけではなく、自民の政策遂行力に国民の視線が注がれている。(千田恒弥)