年齢を重ねるにつれ耳が徐々に聞こえにくくなるため、高齢者に多い疾患「加齢性難聴」。放置すると、コミュニケーション能力の低下、認知症やうつ病、社会的孤立などのリスクが上昇します。しかし日本では、難聴を自覚する人の中で聞こえを補助する補聴器の普及率は諸外国と比べて低く15%にとどまっています。医学系の学会など8団体は共同宣言を発表し、耳の衰えに早めに気付き受診することなどで補聴器の普及率を改善しようと取り組みを強めています。 (増井のぞみ)
◆細胞のダメージ原因
加齢性難聴は、どのような仕組みで起こるのでしょうか。日本耳鼻咽喉科頭頸部(とうけいぶ)外科学会によると、主な原因は、加齢により、耳の最も奥にあるカタツムリの殻状をした器官・蝸牛(かぎゅう)の中にある「有毛(ゆうもう)細胞」がダメージを受けて減少したり、表面の毛が抜け落ちたりすることです。有毛細胞は、音を感知したり増幅したりする役割があります。障害を受けると、音の情報をうまく脳に送ることができなくなります。
現時点で加齢性難聴に対して聴力そのものを改善する治療はありません。重要なのは、できるだけ早期から補聴器などを使って、「聞こえ」を改善し、言葉を聞き分ける能力を衰えさせないことだといいます。
海外の研究では加齢性難聴が進行した場合のリスクとして、認知症は1・37倍、うつは1・48倍に発生率が高まり、社会的孤立に陥る確率は2・78倍になると報告されています。日本老年精神医学会理事長の池田学・大阪大教授は「老年期のうつ病や不安症、幻覚、妄想状態のベースに、難聴が関与している可能性が高い」と強調します。
◆普及進まない4要因
日本補聴器工業会がまとめた世界16カ国の補聴器普及率の調査報告では、英国53%、フランス46%、ドイツ41%、韓国37%などと続き、最下位の中国10%に次いで低いのが日本15%と顕著な差が出ています。
普及率が日本では低い要因について、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は(1)難聴を感じた際の受診率が低い(諸外国50~80%、日本38%)(2)医師から補聴器が提案される率が低い(諸外国60~80%、日本37%)(3)補聴器の満足度が低い(諸外国70~80%、日本50%)(4)購入時の費用助成率が低い(諸外国60~90%台、日本8%)の4項目を挙げます。
前出の2学会など8団体は3月、これら4項目について段階的に80%以上にする数値目標を掲げ、健康寿命の延伸などを目指した加齢性難聴対策に関する共...