かつて新宿駅西口にあり、野宿状態になった人々を受け入れたコミュニティー「新宿ダンボール村」を撮影し続けた写真家の迫川尚子さんの写真展と、米国の路上生活者らが撮影したドキュメンタリー映画の上映会が22日から、東京都武蔵野市吉祥寺本町1の「エスパス・オール」で開かれる。約2年間存在し、貧困の可視化につながったとも評される「幻の村」の実態に約30年ぶりに光が当たる。【東海林智】
新宿ダンボール村は、1996年1月24日に都が動く歩道の設置を名目に、新宿駅から都庁に向かう通路に作られた段ボールハウスを強制撤去したことをきっかけに誕生。段ボールハウスに住んでいたのは、90年代のバブル崩壊後の経済不況やリストラなどで仕事や住居を失った人が多く、撤去後、新宿西口広場にダンボール村と呼ばれるコミュニティーを作った。村は同日立ち上がった。98年2月7日未明に発生した火災で約50のハウスが燃えたことをきっかけに村は姿を消した。多い時には約200人が住んでいたという。
迫川さんは、新宿駅東口のカフェ「ベルク」の副店長もしており、強制撤去の朝、カメラを手に現場に駆けつけた。以来、村がなくなるまで約2年間、毎日通って撮影してきた。「路上生活者の現状、排除の動きなど、ともかく記録しなければと思った」と振り返る。デジタルカメラや携帯電話が今ほど普及していない当時、記録し続けることは大変だった。フィルムで膨大な量の写真を撮った。
展示作品には、ハウスの内部や住民らの豊かな表情、暮らしぶりが写し出されている。段ボールハウスに絵を描く芸術家たちも現れるなどコミュニティーの広がりも記録した。撮影は住民への声かけから始まる。対話を重ね、信頼関係を築きカメラを向けた。活動の中で気になったのは、通り過ぎる人々の目線だった。「まるで見えていないような感じだったり、非常に冷たい目線だったり。『物や金がないつらさより、人々の視線がつらい』という村民の声をよく聞いた」という。だからこそ、記録し、ダンボール村を知ってもらいたいと活動を続けた。
ダンボール村は、日本にも貧困状態が存在することを可視化するきっかけにもなった。迫川さんは「中高年の男性だけでなく、若者や女性へと貧困は多様化している。30年前の写真をもう一度見てもらい貧困問題を考えてもらえれば」と話している。
写真展は22日~2月8日の木、金、土、日の正午~午後5時(無料)、22~25日、2月1、8日に上映される米国の路上生活者のドキュメンタリー「ダーク・デイズ」は1500円。24日には迫川さんとビッグイシュー基金共同代表の稲葉剛さんの対談も予定されている。上映時間など詳細はビッグイッシュー日本のホームページ(https://www.bigissue.jp/)。