政府・与党は多国籍企業に最低15%の法人税負担を求める税制を改正し、米国企業を適用外にする。国際法人課税にはトランプ米政権が反発し、1月に入って日本を含む147カ国・地域が例外規定を設けることで合意していた。対立回避を優先するものの、国際的な税逃れ対策の効力は薄れかねない。
自民党の税制調査会は15日の総会で、国際法人課税に対応した国内税制の改正案をまとめた。2026年度税制改正の関連法案に盛り込む。
日本国内に拠点を置く多国籍企業の法人税の負担率が15%を下回る場合に、追加負担を求めることができる仕組みに例外規定を設ける。例外の適用には対象国の税制が15%の最低税率水準を事実上満たしていることが条件となる。米国については自国企業への課税の仕組みが条件をクリアしているとみなす。
法人税の最低税率の設定は、米国も加入している経済協力開発機構(OECD)を中心に世界の約140カ国・地域が21年に合意した内容に基づく。日本政府は国際合意をふまえ、23〜25年度に関連する税法の改正を進めてきた。
25年1月のトランプ米大統領就任で風向きが変わった。国際合意に基づき各国が実行に移した最低税率ルールが米国の課税主権を脅かすと反発し始めた。バイデン前政権下での合意は米議会での手続きがなければ、効力をもたないとの覚書も公表した。
5月には米下院が最低税率ルールを導入する国の個人や企業を対象に、税率を段階的に引き上げる「報復税」を盛り込んだ法案を可決した。日本も標的になる恐れがあるとして、米国に進出する日本企業から不安の声が上がっていた。
最終的には主要7カ国(G7)が米国の現行の税制が国際ルールに整合するものだと認定し、米国も報復措置を見送ることで折り合った。年が明けて米国時間の1月5日にOECDなどがルール改正で合意したと発表した。
国家間の対立はいったん収束しても、国際的な税逃れ対策の実効性は米国の動向に左右されることになった。米自身が自国の企業に十分な税負担を求めなければ、機能不全に陥ってしまう。
東京財団の岡直樹上席フェローは「公平性や安定性が課題で、国際基準として長持ちするかは疑問だ」と指摘する。
新ルールでは29年までに一連の対策の状況を確認する。米国をはじめ各国が税逃れを見逃さず、15%の最低税率が維持されているかが焦点となる。
国際課税を巡っては、インターネットを通じて現地拠点をもたずに各国でサービス展開する企業への課税というテーマも残る。デジタル課税と呼び、企業がサービス展開する各国にも課税権を配分するのが目標だが、国家間の調整は遅れている。GAFAに代表される巨大テック企業を有する米国が不利益を被るとして後ろ向きな姿勢を示す。
欧州などの一部の国はしびれを切らして独自に課税を始めており、トランプ政権は反発している。最低法人税率に続き、デジタル課税に関する議論も今後の動きが注目される。