就職活動の相談をしていると、一定の共通点を持つ学生に出会うことがあります。成績は安定しており、提出物の期限もきちんと守る。エントリーシートは読みやすく、面接でも受け答えは丁寧です。周囲から見れば「順調に進みそうだ」と思われるにもかかわらず、結果として内定に結びつかない。企業からの評価も「悪くはない」「しっかりしている」という言葉に留まり、決め手に欠けるまま選考が終わってしまいます。
こうした学生に比較的多く見られるのが、「失点しないこと」を強く意識した就職活動です。変なことは言わない、設問の意図を外さない、無難にまとめる。いずれも就活では大切な姿勢ですが、それだけでは評価が伸びにくい場面があります。採用は、一定の基準を満たした学生の中から誰を選ぶかを決める選抜の場です。そのため、減点されないことと、選ばれることの間には、必ずしも一致しない部分があります。
面接でのやり取りにも、その影響が表れます。まじめな学生ほど、質問に対して正確に答えようとします。条件を守り、要点を整理し、簡潔に伝える。その姿勢自体は評価されますが、面接官が知りたいのは答えの正しさだけではありません。これまでどのように考え、どんな判断を重ねてきたのか。話の内容から、その人の思考の癖や価値観が見えてくるかどうかが、評価の分かれ目になることがあります。
自己分析についても同様です。この層の学生は、自己分析に時間をかけています。強みや弱みを整理し、エピソードも準備している。ただし、それが「自分を説明するための整理」に留まっている場合、企業側が知りたい情報とはかみ合いません。現場で迷ったときに何を基準に判断するのか、周囲と意見が違ったときにどう振る舞うのか。そうした行動の背景まで伝わらなければ、人物像は立体的に見えてきません。
また、企業に合わせようとする意識が強くなりすぎる点も見受けられます。企業研究を丁寧に行い、求める人物像を理解し、それに沿った志望動機を組み立てる。その結果、内容としては整っているものの、他の学生との差が見えにくくなることがあります。企業をよく理解していることと、「この学生を採りたい」と思われることは、必ずしも同じではありません。
背景には、「評価されれば内定につながるはずだ」という考えがあります。しかし就職活動は相対評価であり、採用枠のある選考です。一定の評価を受けていても、比較の中で別の学生が選ばれることは珍しくありません。評価されることと、選ばれることの間には、想像以上に距離がある場合があります。
〝真面目で優秀〟であることは、就職活動において大きな強みです。ただ、それが結果に結びつくかどうかは別の問題でもあります。正解を探し続ける姿勢から一歩踏み出し、自分なりの判断軸や視点を言葉として伝えられるかどうか。就職活動では、完成度の高さ以上に、その人らしさが面接官の記憶に残るかが問われる場面も少なくありません。(「内定塾」講師 齋藤弘透)
ここ十数年で新卒の就職活動も大きく変化してきました!新卒の就職活動は、世の経済状況や世相を反映しやすく、年によって状況が異なります。東京、大阪の主要都市を中心に全国8校舎を持つ、就活塾・予備校最大手の「内定塾」講師が、就活事情の最前線をご紹介します。