米中西部ミネソタ州ミネアポリスで米国人女性のレネ・グッドさん(37)が移民・税関捜査局(ICE)職員に撃たれて死亡した事件から1週間が経過した14日、現場周辺にはグッドさんを悼む多くの人々が集まった。一方、ICEが入居する連邦庁舎の前では抗議デモが続いており、ICEによる市民らの拘束も相次ぐなど、街は今も緊張状態が続いている。
事件から1週間たった今も、住宅街の現場周辺は、追悼の人通りが絶えない。AP通信によると、グッドさんはミネソタ州に引っ越してきたばかり。3人の子供がおり、事件直前には一番年下の子供を小学校に送っていたという。訪れた人々は氷点下10度ほどの寒さの中、花やぬいぐるみを手向けていた。
「弔意を示したくてここに来た。私にも幼い子供がいる。彼女や残された子供たちのことを思うと、本当に胸が張り裂ける思いだ」
ミネアポリス市近郊に住むアリーシャ・シャルプさん(44)はこう語り、涙をぬぐった。
事件が起きたのは7日。ICEを所管する国土安全保障省は、移民取り締まりへの抗議活動をしていたグッドさんがICE職員を車でひこうとしたとして正当防衛を主張。「過剰対応」などとする地元当局や地域住民らと対立している。
同市では6日からICE職員ら2千人が動員され、移民の取り締まりを強化していた。今後さらに数百人増員される。記者も14日、配車サービスの車に乗っていた際、ICEによる拘束とみられる場面を2度、目撃した。運転手の黒人男性から「この街は今、ICEだらけだ。東アジア人も安全ではないから気をつけろ」と忠告された。
一方、ICEが拠点を置く連邦庁舎の前では、14日も数十人規模の抗議デモが発生。人々は「ICEは出ていけ」などと叫び、興奮した一部が侮辱的な言葉を投げかけていた。複数の参加者によると、ICE側は抗議者を解散させるために催涙ガスや非致死性のペッパー弾を使用したという。
初めてデモに参加したというブリアンナ・チェイスさんは「正直にいうと、ここにいるのはすごく怖い」と明かしつつ、「参加しないという選択肢はない」と語る。チェイスさんは「ICEに拘束される人々はほぼ有色人種で、(白人中心の)『理想の社会に合わない』という理由で標的にされている。ここで誰かが立ち上がらなければ、彼らを止められなくなる」と話した。
事件の背景である移民摘発を巡っては、政治的な思惑も指摘される。ミネソタ州の知事は2024年大統領選で民主党の副大統領候補だったウォルズ氏。同州では近年、ソマリア系移民が関与する大規模な補助金の不正受給事件が発覚しており、共和党のトランプ政権はウォルズ氏への追及を強めている。
ミネソタ州やミネアポリス市などは12日、移民摘発強化は「違憲で違法だ」として、停止を求めて連邦政府を州の連邦地裁に提訴。国土安全保障省側は「根拠のない訴訟だ」と主張している。(ミネアポリス 本間英士)