今回の衆院選で各選挙区の勝敗を左右する大きな要素の一つとみられているのが、公明党支持層の投票行動だ。特に「常勝関西」と呼ばれるほど公明は関西で強固な地盤を誇る。昨年10月に公明は自民党との連立を解消し、選挙直前に立憲民主党との新党「中道改革連合」を設立。公明の支持票が新党のシナリオ通りに中道候補に向かわず、旧来の関係により自民候補に流れる可能性はあり、選挙戦終盤の注目点になりそうだ。
「若い人で自民としか一緒にやったことがない人はしんどいのではないか」
ある関西の公明地方議員は、立民出身の中道候補を支援することについて実情をそう吐露する。公明は平成11年10月に自民と連立政権を組んで約26年間、衆院選では公明の支持母体の創価学会を中心に、多くの選挙区で自民候補を支援してきたからだ。
令和6年10月の前回衆院選で公明は、関西の2府4県(大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀)の比例で約103万票を獲得。独自候補を擁立した大阪の4選挙区では全敗し、兵庫の2選挙区では勝利して計約38万票を得票した。公明候補のいないほかの選挙区では、1選挙区当たり1万~2万票ともいわれる公明票が自民候補の当選につながった例もあったとみられる。
今回、公明は前回擁立した全国11選挙区のすべてから撤退し、選挙区は立民出身の中道候補に一本化。中道の斉藤鉄夫共同代表(公明前代表)は1月19日に公明大阪府本部を訪れた際、「中道の候補の当選に全力を挙げる。中道候補がいないところは、中道の理念、政策に理解がある方かどうかという観点から、地元でよく話し合って決めていただく」と語った。
中道は関西の45選挙区中、25選挙区で候補を擁立。候補のいる選挙区で勝ち切ることが目標になる。ある選挙区の中道陣営関係者は「組織のある公明の存在は大きい」とうなずく。
しかし、公明支持者がどれだけ中道候補に投票するかは不透明だ。新党の名前を短い選挙期間中に有権者に浸透させられるかという課題があるほか、長く対立してきた立民出身候補を応援することへの抵抗感はぬぐえない。
一方、自民の場合、これまで支えてくれた公明票が流出することへの危機感と同時に、今回も一定の公明票が期待できるとみる向きもある。
大阪では19選挙区中、自民は18選挙区、中道は8選挙区で擁立している。自民大阪府連の松川るい会長は1月17日の記者会見で「新党(中道)が擁立する候補がいないんだったらぜひ、これまでの長らくの協力関係を踏まえて自民の候補を応援してもらいたい」と述べた。杉本太平府連幹事長も「(前回まで)自民候補に票を入れてくれた公明支持者に引き続き訴えていくことは自然なこと」と話した。
関西の多くの選挙区では日本維新の会が自民と議席を争う。公明支持者には前回、それまで守ってきた大阪の選挙区の4議席をすべて維新に奪われたことへの「遺恨」がある。
ある公明の地方議員は「これまで長い間(自公で)協力関係を続けてきた。ある種の余韻みたいなものはあるだろう」と話した。斉藤氏は産経新聞の取材に、今後の政界の状況次第では「(中道として)自民と連立を組むこともあるかもしれない」と話しており、政局の流動化もにらみながらの選挙戦になりそうだ。(入沢亮輔、江森梓)