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経済 日経新聞 2026年02月02日 02:00

与野党が食品の消費税率ゼロを掲げており、2026年度内に実現する可能性がある。スーパーや青果店で飲食料品の価格は8%分下がるのか。

「原料調達から店舗販売までのサプライチェーン(供給網)の中で、減税に対応できない企業が出てくる可能性がある」。食品スーパーを運営する、さえきセルバホールディングス(東京都国立市)の佐伯行彦社長はこう予測する。

消費税の実務に詳しい菊池典明税理士も「きれいに8%分下がる可能性は低い」とみる。2人の見解は消費税の納税の仕組みが関係している。

例えば税込みで216円の緑茶飲料の場合、消費者は16円の消費税をスーパーなど店側に払う。店はこの16円を納税するわけではない。メーカーからの仕入れ額が税込みで108円なら、その消費税分8円を差し引いて8円だけ納税する。メーカーも同様に茶葉農家からの仕入れにかかる消費税を控除し納める。

大ざっぱにいえば消費者の払った税を各流通段階の事業者が分担して納める。各事業者がそれぞれ売値を決めるため、流通に関わる全ての事業者が8%分下げるとは限らないのがポイントだ。

食品を売るためのコストは原材料の仕入れ代だけではない。包装材や人件費、店舗の賃借料なども考える必要がある。供給網の中のある事業者が「減税により納税せずに済むお金を、高止まりする人件費や他の経費に少し充ててしまおう」と考えれば、最終価格の値下げを妨げる要因になる。

税の調整により最終の利益が変わらなくても、値下げで短期的に現金収入が減るデメリットもある。事業者が値下げをためらう理由になり得る。

ドイツは20年7月から半年間、新型コロナウイルス危機の対応で付加価値税の標準税率を19%から16%、食料品などの軽減税率を7%から5%に下げた。同国の研究機関CESifoの報告書によると、スーパーの店頭価格の下げ幅は減税分の7割ほどにとどまった。

再増税の際に価格が元に戻りきらないことも明らかになった。減税による消費者への恩恵が薄く残る可能性がある一方、事業者が再値上げに苦労することもあり得そうだ。全国展開する大手スーパーの関係者は「税率を戻したときの売り上げの反動減も大きくなるだろう」と懸念する。

公開討論会などで国民民主党の玉木雄一郎代表が問題提起する「8%の減税は非課税取引か免税取引か」という点でも値下げ効果は分かれそうだ。両者を比べると食料品以外の売り上げや間接コストに対して、免税取引の方が仕入れに関する税額控除を多くできる可能性が高く、手もとに値下げ原資が残りやすい。

こうした詳細な制度設計も店頭価格がどれくらい下がるかを左右する。

(編集委員 中島裕介、原欣宏)

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