【あらすじ】オープンを控えた「アトリエ&ビストロ・イチコ」のレセプション。立ち退きに苦労した人の話をせがまれた不動産会社カミノの山本は、この建物の元入居者・佐藤氏について語る。特定の音で片頭痛を発症する彼の転居先はなかなか決まらず、結局、交渉の最中に母親が亡くなるという偶然で実家に戻ることになり、解決したのだった。
カミノ史上、一番の手強(てごわ)い入居者。市子に売却したこの建物で、最後まで残った入居者は確かに佐藤氏だ。手強かった、というならその通りだが、他の入居者たちであっても、すんなり退去となったわけではない。交渉の最中には相手の事情も人生も――それぞれの夢もあったのだ。