8日投開票の衆院選で「自民圧勝」の情勢分析が広がる中、「自民苦境」が伝えられる選挙区がある。大分県北部の大分3区。自民党前職で前外相の岩屋毅氏(68)が11選を目指す「岩屋王国」に、過去最多の5人が立候補した。中道改革連合新人が岩屋氏と激しく競り合い、岩屋氏の中国などへの政治姿勢を批判する保守系3新人が「打倒岩屋氏」を掲げ包囲網を築く。発端は、選挙区内でくすぶるイスラム系土葬墓地建設問題だった。
「岩屋氏は『土葬墓地を推進しているわけではない』と言うが、反対もしていない。私たちは反対をしたいんです」
大分県中津市の国道沿い、参政党新人で漫画家の野中貴恵氏(41)は夕闇の中でマイクを握り、大型商業施設の買い物客らに向かってこう呼びかけた。「風評被害が起きたら、大分県の農産物も魚も売れなくなる。政治は地域の皆さんの不安な気持ちをくみ取ってほしい」
福岡市在住で、6歳男児の母。前回衆院選では福岡1区から出馬した。今回、公示4日前に記者会見し大分3区での立候補を表明。街頭演説後、取材に理由をこう語った。「土葬を明確に反対している政党がほかになかったから。仮に岩屋さんが土葬に反対してくれるなら、私は要らない。でも、そうじゃない」
同選挙区では両氏のほか、中道新人の小林華弥子氏(58)、無所属新人の平野雨龍氏(32)、日本保守党新人の岩永京子氏(64)が立候補している。土葬墓地をめぐっては、九州地方にイスラム教徒の土葬墓地がないことから、同県別府市のイスラム系宗教法人が日出(ひじ)町に九州地方で初めてとなる墓地建設を計画。埋葬した遺体の上に、20年たてば新たな遺体を重ねて埋葬する方式だったことなどから、令和6年8月、「断固反対」を訴える町長が当選し、計画は事実上頓挫している。
ところが昨年11月、町に隣接する杵築(きつき)市の自民党市議団が政府や自民党本部に対し、「日本全国で国が責任を持ち、複数の地域に土葬対応可能な墓地を確保・整備すること」などと求める異例の要望書を提出。要望活動には地元選出の岩屋氏が尽力したことから、国会で取り上げられるなど再び波紋が広がり、批判の矛先は岩屋氏へと向かったのだ。