キャリアハイの昨季から「全部変えた」 佐藤輝明がキャンプ初日に垣間見せた理想の打撃

スポーツ 産経新聞 2026年02月03日 11:30
キャリアハイの昨季から「全部変えた」 佐藤輝明がキャンプ初日に垣間見せた理想の打撃

早期の米大リーグ移籍を目指す阪神・佐藤輝明内野手(26)の高い志を全軍が吸収することを望みます。12球団で唯一、契約更改を終えていなかった佐藤輝は1月30日に球団側と1年契約、年俸4億5千万円プラス出来高5千万円(金額は推定)で合意。2月1日から沖縄・宜野座で始まった春季キャンプでは、初日から3連発を含む8本の柵越えを披露しました。ポスティングシステムを利用してのメジャー移籍について、今後も球団側と話し合いを継続する主砲はメジャー挑戦へのスキルアップに余念がありません。高みを目指す姿勢は他のナインも見習うべきです。リーグ連覇へのエネルギーにつながるでしょう。

沖縄・宜野座に詰めかけた3500人の観衆が大歓声を上げました。まさに真打ち登場。打撃ケージに入った佐藤輝はキャンプ初日から46スイングで3連発を含む8本の柵越えを披露したのです。

「体の動きと、守備、走塁、バッティング、それぞれ確認しながらやってました。風もあるし、ボールも違うので一概に言えないですけど、1日目にしてはいいんじゃないかなと思います」

佐藤輝は満足そうに〝初打ち〟を振り返りました。セ・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いた昨季は40本塁打、102打点で打撃2冠。打率2割7分7厘もキャリアハイでした。好不調の波が大きく、悪球打ちも目についていた打撃がレベルアップし、「柔軟性が出て、打撃が変わった」とまで評価されたシーズンでした。ところが、キャンプ初日に見せた打撃は昨季からさらに進化していました。力まず、リラックスしたスイングで大飛球を連発する姿から、今季に向けた並々ならぬ意欲がうかがえます。

打撃の内容を問われた佐藤輝は「(オフは)全部変えました。ここじゃ説明できない。長くなっちゃうんでね」と話しました。オフの間に体幹を鍛え、体重も約100キロに増えたそうです。

あくまでも想像ですが、目指すポイントは体重移動を極力抑え、その場で体を捻転してボールに強い力を与えてはね返す打撃フォームではないか…と。なので見ている側にはとても軽く打っているように見える。視線の先にあるのは、ドジャース・大谷翔平選手(31)らの打撃フォームではないかと思います。

「よく周囲からは『軽打』してますねって、言われるんですよ。まあ、そういうふうに見られるってことはいいことなんですけど、僕自身は全く軽打はしていません」

昨年暮れに打撃について聞いた際、佐藤輝はそう答えていました。ではどうして昨季、最高の結果が出たのにさらに打撃フォームを進化させようとしているのか-。目指す場所が大リーグだからでしょう。

大リーグの投手が投げる直球の平均球速は150キロ以上といわれます。それに高速の変化球を織り交ぜてくる。左打者の場合、右足を大きく上げてステップし、軸足側に体重移動していてはとても対応できません。いかに体重移動を抑え、その場で捻転し、打ち返せるか。

佐藤輝がイメージする投手は昨季サイ・ヤング賞を受賞したポール・スキーンズ投手(23)=パイレーツ=や、タリック・スクーバル投手(29)=タイガース=らでしょう。それゆえ昨季の好成績に満足することなく、オフを返上して打撃を「全部変えた」のではないでしょうか。

昨年10月末から始まった契約更改交渉は、締結まで約3カ月を要しましたね。佐藤輝の代理人ショーン・ノバック氏が求めていたのは、2026シーズン終了後のポスティングシステムでの大リーグ移籍でした。佐藤輝も「(争点は)ポスティングと年俸」と認めています。そして1月30日に阪神と単年契約を結んで以降も、「ポスティングについては球団側と話し合いを続けていきます」と話しています。つまり夢、憧れであるメジャー移籍への意欲は全く衰えておらず、今オフのポスティング容認を迫る気持ちにも変わりはないということでしょう。

早期のポスティング容認の是非は横に置いておき、野球選手として子供の頃から憧れていた世界を目指す気持ちは大いに結構です。世界最高峰のリーグを目指すからこそ、自身に負荷を与え、スキルアップにも余念がない。すごい向上心です。

そして、佐藤輝の野球に対する姿勢を他のナインは肌で感じて刺激を受けなければなりません。昨季MVPに輝いたチームの主砲がさらに高みを目指し、技術改良を試みている姿は見習うべきです。

引き合いに出して申し訳ないですが、キャンプ初日のブルペンで藤川球児監督(45)がプロ4年目の左腕・門別啓人投手(21)に苦言を呈していました。「近道をしたいような選手もいる。昨年の反省があって、できるだけここで体力を使わず1年間働きたいなという選手を見ていると、こぢんまりしてくる」と話したのです。

門別とすれば、2年ほど前から春季キャンプ中は評価を上げるのにシーズンに入ると竜頭蛇尾…。こうした傾向を踏まえ、キャンプ序盤は力をセーブしようと考えたのかもしれません。しかし、指揮官にはその思考回路そのものが不満だったのでしょう。キャンプ序盤は若手選手のアピールの場です。より高みを目指すのであれば、力をセーブするなどあり得ない。キャリアハイの好成績にも満足せず、さらに前に進もうとする主砲の姿勢とはまさに正反対です。

佐藤輝は3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表「侍ジャパン」のメンバーに選出されており、14日から宮崎で始まる事前合宿に参加します。つまりキャンプでの練習参加は実質、12日まででしょう。侍ジャパンが3月17日の決勝に進出すれば、阪神に再合流するのは同20日頃でしょう。森下と坂本、石井の侍ジャパン組も同様です。

チームメートが佐藤輝を間近で見られるのは、もう10日間ほどしかありません。その短い時間の中で主砲の姿勢に感化され、それぞれがスキルアップに精進してほしいものです。結果としてチーム力は確実に向上するはずです。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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