8日の投開票に向け、舌戦が繰り広げられている衆院選。高市早苗首相(自民党総裁)の地元・奈良県では高い首相人気を追い風に自民陣営が勢いづいている。奈良1区では、自民前職の小林茂樹氏と中道改革連合前職の馬淵澄夫氏が、平成24年から6度目の対決。昨年の参院選で存在感を示し、両陣営から警戒される国民民主党新人の杉本葵氏が絡んだ選挙戦が展開されている。
「チーム高市、チーム奈良」
1月31日夕、奈良市の近鉄大和西大寺駅前に小林氏の声が響いた。過去5回の衆院選で小林氏が馬淵氏を相手に選挙区で勝ち抜いたのは29年の1度のみ。後は比例復活がやっとで、26年にはそれすらできなかった。そんな強敵を相手に小林氏陣営は今回、「高市首相推し」を前面に立てて挑んでいる。
この日の演説では、首相から任された文部科学副大臣の職を「高市内閣の中枢」と強調。運動員は首相が表紙を飾る自民党の政策パンフレットに小林氏のビラを挟み込んで配布する。
「ここは(高市首相の選挙区の)2区じゃないが、はた目には高市さんの選挙運動に見える」。自民市議が苦笑するほどの〝推し〟ぶりだが、小林氏の陣営幹部は「今回はほかにやりようがない。それほど高市さんの風が吹いている」と意に介さない。連立与党を組む日本維新の会の地方議員も応援に入る。
昨年7月の参院選の比例票で、奈良県内の自民党得票率は19・81%。令和4年参院選と比べ約12ポイントも下落した。県連は今回、高市氏の地元事務所関係者も1区に投入。「首相おひざ元の奈良県で選挙区を落とすわけにはいかない」と幹部は使命感を漂わせる。
一方の馬淵氏は前回選までの立憲民主党でなく、公明党と結成した新党・中道から出馬した。
公示日の1月27日。馬淵氏のホームタウンでもある近鉄学園前駅北口で、ひときわ大きい拍手が起きた。街宣車に姿を見せたのは公明県本部、立民県連、連合奈良のトップ。3人とがっちり握手を交わした馬淵氏は「高市氏は自分かほかの総理を選べという、自分ファーストの解散に打って出た。受けて立つ」と声を張り上げた。
長年の支持基盤である連合奈良に加え、今回は公明という新たな援軍を得た。かじ取りの困難さも懸念されるが、30日には公明出身の岡本三成共同政務調査会長が来援。小林氏の地元・近鉄大和西大寺駅前を数百人が埋めた。過去にない組み合わせだが、公明県本部幹部は「馬淵氏支援で固まっている。序盤の劣勢報道で選挙態勢は引き締まった」と自信を見せる。
その両陣営が警戒するのが、公示日前日に立候補表明した国民の杉本氏だ。昨年の参院選にも立候補し、次点と健闘した杉本氏は手取りを増やすと訴えながら選挙区をかけめぐる。2月1日には榛葉賀津也幹事長が来援、若さと女性の目線をアピールした。
立民も候補者を擁立した昨年の参院選で、自主投票を選択した連合奈良は今回、馬淵氏を推薦した。連合奈良の幹部は「水面下で(票が)割れるのは仕方がない」と杉本氏を警戒、小林氏陣営も「保守系の浮動票の一部が流れるかもしれない」と危機感を抱く。
1区には消費税の一律5%への引き下げを訴える共産党の谷川和広氏や、若者の救済が最優先の経済政策と主張する参政党の黒川洋司氏も立候補している。(平岡康彦)