人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った細胞を患者に移植するiPS再生医療は、19日に条件・期限付き承認が了承された虚血性心筋症とパーキンソン病以外でも、多様な取り組みが進んでいる。
実用化が近いとみられるのが、慶応大発のベンチャー「ハートシード」(東京都港区)だ。心筋細胞の塊「心筋球」を、虚血性心疾患という心不全の患者の心臓に注射し機能を回復する。令和7年1月に治験対象の全10人への移植を終え、安全性と有効性を確認できたことから、8年中にも承認申請を行う見通しだ。
慶応大の別チームは、神経のもとになる細胞の移植で亜急性期脊髄損傷の治療を目指す。患者4人に移植する治験が6年11月、手術後の経過観察まで終了している。
眼科での治験や臨床研究も活発だ。目の病気で視力が衰えた患者への網膜細胞や角膜細胞の移植が、理化学研究所や神戸アイセンター病院、大阪大などで行われ、安全性や物を見る力の改善が報告されている。
日本人の死亡原因の第1位、がんも標的だ。京都大は、体内のがん細胞を見つけて攻撃する免疫細胞「ナチュラルキラー(NK)細胞」を、卵巣がん患者に移植するがん免疫療法の治験を進行中だ。千葉大と理研も、頭頸部(けいぶ)がん患者に別の免疫細胞「NKT細胞」を投与する基礎的な治験で、安全性と「有効性の兆候」を確認した。
ほかに、血糖値を下げるインスリンを分泌する膵島細胞を1型糖尿病患者に移植する治験や、膝軟骨の損傷患者への軟骨細胞移植、再生不良性貧血患者への血小板移植などの臨床研究も行われている。(伊藤壽一郎)