今春の選抜高校野球は指名打者(DH)制が導入された大会だった。全31試合の中で延べ56チームがDHで選手を起用した。打順を見ると6番が最も多く、7、8番と下位が目立った。各チームとも主軸を打つ選手と同じレベルの打撃力を持つDHは少なく、オーダー決定は手探りの状況だったことを浮き彫りにした。大会の総得点は昨年より減少しており、得点力アップへDHが機能するのは起用法が定着し、選手育成が進んだ夏以降となりそうだ。
プロ野球でDHといえば「不惑の大砲」といわれた門田博光(元南海など)、「カリブの怪人」と呼ばれたデストラーデ(元西武)らベテランの打撃職人や外国人スラッガーがイメージされるが、高校野球は全く違うものだった。31試合でDHが最も多く起用されたのは延べ12人の6番で、11人の7番が続いた。6~9番が延べ35人だったのに対し、3~5番のクリーンアップは17人だった。
DHとして先発出場した選手の打撃成績は177打数33安打で打率は1割8分6厘。この数字は出場全選手の1989打数467安打、打率2割3分5厘を5分ほど下回る。DHで打線の強化が図られ、得点力はアップすると見られていたが、大会総得点は前回より54点も少ない231点にとどまった。DHが打線強化につながらなかったケースが多かったといえる。
そんな中、プロ野球的なDHの働きをしたのが優勝した大阪桐蔭の4番谷渕瑛仁(たにぶち・えいと)だ。腰のコンディション不良で出遅れたために背番号20を与えられた左打者は全5試合で「4番・DH」に入り、19打数で本塁打を含む6安打の打率3割1分6厘、5打点と活躍。昨秋の近畿大会1回戦の市和歌山戦で「4番・三塁」に入り、サイクルヒットを記録した打棒を披露した。谷渕は「自分は守備が苦手なのでDHが合っている」と「水を得た魚」だった。