トランプ政権「アジア重視」から転換? 対イラン作戦、装備・部隊移転で米軍高官ら懸念

国際 産経新聞 2026年04月05日 08:53
トランプ政権「アジア重視」から転換? 対イラン作戦、装備・部隊移転で米軍高官ら懸念

米イスラエルとイランの交戦が1カ月以上続く中、米軍高官や有識者の間で、インド太平洋地域における戦略環境の悪化を懸念する声が高まっている。中国との有事に備えてアジアに配備されていた装備や部隊が中東地域に移転されているからだ。最近約10年間の歴代米政権はアジアに戦力を集中させる方針を掲げてきたが、今回の対イラン作戦が方針転換のきっかけとなりうると指摘する声もある。

米海軍制服組トップのコードル作戦部長は3月31日、ワシントンで開かれた会合で、イランでの軍事作戦により対中抑止力が低下するか問われ、こう答えた。

「これは算数の問題だ。限られた資源を使ってしまえば、他の問題に割り振る余地はそのぶんだけ減る」

コードル氏はこうした制約の中でもインド太平洋における抑止力を維持すると強調した。だが複数の米軍高官は、対イラン作戦で装備・弾薬を消費することで、他の地域に影響を与えることに懸念を示したと米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は報じている。

2月28日の交戦開始以降、アジアに配備されていた地対空迎撃ミサイルや海兵隊の即応部隊が中東に移転している。精密攻撃を行う巡航ミサイル「トマホーク」も中東配備分をほぼ使い果たし、米国防総省はインド太平洋の配備分を移転することも検討しているとされる。

もともと、インド太平洋の米軍を支える弾薬や装備の供給態勢は不安視されてきた。米政府監査院(GAO)は3月4日に発表した報告書で、同地域における装備の事前集積が不十分だという問題を過去に指摘したにもかかわらず、「改善策は実行されていない」と批判した。対イラン軍事作戦は状況を一層悪化させる可能性がある。

2000年以降の米国が中東の戦争で国力を疲弊させ、中国の台頭を許してきたという反省は超党派で一致するところだ。オバマ政権は10年代に米戦略の重心をアジアに移す「ピボット(旋回)」政策に着手し、第1次トランプ政権、バイデン政権でも踏襲されてきた。

こうした流れが断ち切られる恐れを抱くのは、オバマ政権の国務次官補としてピボット政策を主導したキャンベル氏だ。自身が創設したコンサルティング会社に寄せた論考で、対イラン軍事作戦をピボット政策の「逆行」と批判。「トランプ政権関係者は短期間で元に戻すというが、いったん泥沼にはまれば戦力を引き剝がすのは難しくなる」と懸念を示した。

対中抑止力を維持・強化するうえで、対イラン軍事作戦が悪影響しか及ぼさないわけではない。米国が武力行使をためらわない事実が示されたことは、中国が台湾侵攻に二の足を踏む要因となり得る。

ただ、米国に「戦う意志」があっても十分な装備と部隊が展開していなければ抑止力を損ないかねない。戦略国際問題研究所(CSIS)は「中東での紛争が長引けば長引くほど、中国、ロシア、北朝鮮に同時対処するという日米両国の取り組みは難しくなる」と指摘した。(ワシントン 杉本康士)

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