北陸から描く「教育の未来地図」 金沢大で次世代共創イベント、探究型学習が導く将来像

経済 産経新聞 2026年04月09日 14:00
北陸から描く「教育の未来地図」 金沢大で次世代共創イベント、探究型学習が導く将来像

U-18世代と企業・行政が一体となり課題解決に挑む共創イベント「TeSH・CNOリーグ@金沢大学」が3月29日、金沢大学(石川県金沢市)のバイオマス・グリーンイノベーションセンターで開催された。地元の製菓会社の看板菓子を若者世代に売り込むためのブランド戦略など、約3カ月にわたり若者たちが検討した解決プランが披露された。

同イベントは、若者、企業、行政が連携し、多世代・多業種の共創による、アントレプレナーシップ(起業家精神)教育の実践の場として開催された。主催は金沢大学などが主幹機関を務める北陸の大学・高専発スタートアップ創出プラットフォーム「TeSH(Tech Startup HOKURIKU)」、運営は若者と企業などをつなぎ、新しいアプローチで社会課題解決に臨む「みらい共創」(東京都品川区)が担った。

参加した高校生、大学生約30人は、同社が進めるオープンイノベーション施策提案プロジェクト「CNOリーグ」に参加。今回は9チームに分かれ、三幸製菓(新潟市)、化学系産業廃棄物処理業のハチオウ(東京都八王子市)、石川県小松市が提案する課題に取り組んだ。それぞれの課題は、「次世代の日常に溶け込む雪の宿(菓子名)とは」「化学物質の安全教育の認知向上」「小松市が世界に飛び出す企画」というテーマが設けられた。

最優秀賞を受賞した三幸製菓のチームは、看板菓子「雪の宿」を、コンビニのホットスナックにする大胆な提案を行った。

若者特有の「買い食い」文化や、夕食前に好きなものを食べる「背徳感」に着目。レジの横に置いてもらいやすい「150円以下の甘じょっぱい商品」というコンセプトを掲げ、スマートフォン片手に食べられるスティック状の揚げ餅を考案した。SNS映えなども意識したデザインをはじめ、徹底した若者目線の戦略が高く評価された。

優秀賞に選ばれたハチオウ担当のチームは、「不明物処理の危険性を回避したい」という会社側の要望に対し、小中学生を対象にした体験型出前授業「謎の白い粉を特定せよ」を提案。見た目が同じ5種類の白い粉の正体を簡単な実験によって特定する出前授業を実際に行った。さらにその経験を踏まえ「廃棄物を安全に処理する『社会習慣の形成』」を目指して、中高生へのキャリア教育の場へと展開する提案を披露した。

優秀賞を受賞した大学2年生、山下七実さんは「教育学部で学び、理科の先生を目指しているので、化学の授業を実施したことが、アントレプレナーシップ教育に携わっている方々から評価されたということは自信になった」と話していた。

企業側が「U-18世代から教育を受ける」側面も意義深い。

三幸製菓の牛腸栄一社長は、メーカー側が自社の設備やブランドに縛られ、市場ニーズとのずれが生じる可能性がある「プロダクトアウト」の思考に陥りがちであることを指摘。そのうえで、「若者の生の生活スタイルや価値観をダイレクトに聞くことで、われわれメーカーのレベルも上がる。ものすごく勉強になった」とこの取り組みの成果を述べた。

審査員を務めた金沢大学の佐々木淑貴特任准教授は、アントレプレナーシップ(企業家精神)教育の重要性に触れ、「大学が、企業・行政との『イノベーションのハブ』として機能することは重要で、そこに若者が多様に関わることで、北陸や日本の競争力を高める拠点にしていきたい」と期待を寄せた。

みらい共創の小嶋彗史社長は、今回のイベントを「多世代共創プラットフォーム」確立への一歩と位置づけ、「若者が実践的な課題解決を成し遂げることで自信を深め、大人が背中を押すこの仕組みは、若者の就労や地域定着などを促す新しい地方創生の形とも言える」と話した。

産学官が三位一体で未来を拓くこの共創モデルは、単なるコンテストにとどまらず、今後、全国へ広がり、教育の在り方や産業構造に一石を投じる可能性を秘めている。(田井東一宏)

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