米航空宇宙局(NASA)は、月の裏側の飛行に成功したアルテミス計画の宇宙船「オリオン」の宇宙飛行士らが、飛行中に肉眼で確認した2つのクレーターに、仮の名前をつけたことを、日本時間8日の記者会見で明らかにした。1つは宇宙船の愛称で信頼や敬意を重んじる思いを込めた「インテグリティ」。もう1つは、船長を務めるリード・ワイズマン宇宙飛行士の亡き妻の名前にちなんだ「キャロル」だ。
NASAによると、新生児集中治療室の看護師で、子供2人の母親だったキャロルさんは、2020年に亡くなった。クレーターにキャロルさんの名前を付けることは、オリオンの飛行士たちが船長のために提案したという。地上の管制室で命名の報告を聞いたNASAの飛行責任者、リック・ヘンフリング氏は同日の記者会見で、「地球の管制室で涙をこらえることができた人はいなかった」と振り返った。
ワイズマン船長は、翌9日にオリオンからオンラインで記者会見に参加し、「一緒に搭乗する3人の仲間たちは、この宝物のような提案を、地球を出発する前に教えてくれた。感動し、みんなとともに泣き崩れた。私たちが最も強く結び付いた状態になって、待ち受ける任務に進み始めた素晴らしい瞬間だった」と命名の秘話を明かした。
2つのクレーターは、月裏側にある巨大な盆地「東の海」の北西側から北側にかけての付近に位置し、飛行士らが肉眼で確認した。存在は知られているが、これまで名前はなかった。現時点で名称は仮のもので、帰還後に正式名称として国際天文学連合へ申請する。
オリオンは、2日に米フロリダ州から大型ロケット「SLS」で打ち上げられ、アポロ17号以来、54年ぶりの有人月周回に挑戦。7日に月浦側の飛行に成功し、地球からの距離が人類史上で最も遠い約40万6770キロに到達した。11日朝、米カリフォルニア州の太平洋沖に着水して帰還する。(伊藤壽一郎)