2026年4月6日付の日本経済新聞に「顔写真1枚で全て暴かれる 700億枚食べたAI、米不法移民摘発に使用か」という記事が掲載された。
記事では、米国企業のClearview AI(クリアビューAI)が構築した顔認証システムが、Facebook、Instagram、YouTube、個人ブログなど、インターネット上のあらゆる場所から700億枚超の顔画像を収集し、データベース化していると指摘。顔写真が1枚あれば、名前から住所、職歴、家族構成まで数秒で特定できるので、不法移民の摘発にも活用されているという。
私たちの誰もが丸裸状態になっていると考えるとギョッとする話だが、これは決して他人事ではない。日本でも顔認証が静かに浸透しつつあるからだ。
例えば、2025年に開催された大阪・関西万博の会場では、NECが開発した顔認証決済システムが導入され、約120万人が登録した。財布やスマートフォンを取り出すことなく、スタッフの前でただ顔を向けるだけで決済が完了する「手ぶら決済」が現実となった。こうした体験が当たり前になる日も、そう遠くないだろう。
顔認証システムの市場規模は、2025年時点で約880億ドル(約14兆円)。年平均成長率は16%前後になっており、今後も右肩上がりの成長が見込まれている。
注目すべきは、この市場が特定の“巨人”に支配されているわけではないことだ。上位5社を合わせても、全体の約30%のシェアにとどまっており、世界各地でプレーヤーが乱立している。
NECやパナソニックといった日本勢のほか、Thales(タレス)やIDEMIA(アイデミア)などの欧州大手、顔認証システム「Face++」で知られるMegvii(メグビー)やSenseTime(センスタイム)などの中国テック企業、そしてクラウドAPI経由で静かに市場を押さえるAWS(Amazon Web Services)やMicrosoftまで、それぞれ異なる戦略で競い合っている。
実は、技術的に最も優れている企業の一つがNECだ。顔認証エンジン「NeoFace」は、米NIST(国立標準技術研究所)のベンチマークテストで世界1位を何度も獲得しており、エラー率はわずか0.07%だという。一方、中国のMegviiやSenseTimeは、精度よりもコスト競争力を武器にしていて、新興国市場で存在感を見せている。