米国で企業が“トランプ関税”に翻弄されている。だが、多くの企業は、自社ブランドを宣伝するため、そして可能な限り多くの商品を売るため、ドナルド・トランプ米大統領とその政権が与えたこの瞬間を利用している。
これは誰も頼んでいなかった販促イベントだ。お得な「タリフ(関税)ディールの日」とでも呼ぶといいだろう。自動車ディーラーから下着ブランドに至るまで、多くの企業が消費者に甘い言葉をかけ、関税が価格を高騰させるか品不足を引き起こす前に、あるいは両方が起きる前に、今すぐ自社の商品を買うように誘っている。
「米国vs他国全員」の貿易戦争が今後どんな展開を見せるか、絶え間ない不確実性が日々生じ続けている。にもかかわらず、米国内で物価が上昇するという幅広いコンセンサスは、各企業が短期的なマーケティングを展開する上で有効なフックと化している。
一部のブランドは、顧客向けのメッセージやSNS上で、かなり露骨な口調を使った。米下着メーカーのMeUndies(ミーアンディーズ)のCEO(最高経営責任者)は、Instagram(インスタグラム)への投稿で罵り言葉を使って関税を批判し、続いて関税からひらめきを得たディスカウントのコード番号を発表した。
米ランジェリー・水着ブランドのBare Necessities(ベアネセシティーズ)は、顧客へのテキストメッセージで「関税前セール」を宣伝した。米CNBCなどのメディアが取り上げたテキストには「先週はタリフ(tariff)のスペルも知らなかったが、これは分かっている。最大30%オフは良いアイデアだ!」と書かれていた。
米衣料ブランドのUniversal Standard(ユニバーサルスタンダード)は「ミステリーボックス」と銘打ったプロモーションについて顧客にメールを送った。既に会社の倉庫に保管されており、そのため追加の関税がかからない商品を値引きする販促だった。
米スーツケースブランドのBEIS(ベイス)は注目を集める買い物客向けのメッセージで、「(コスト削減のための)全社的なラーメンダイエットからCEOに(アダルトコンテンツを扱うSNS)『オンリーファンズ』を始めるよう頼むことまで、ありとあらゆる対策を検討した」にもかかわらず、今後、値上げがある可能性が高いと認めた。
関税ディールの日を謳(うた)ったキャンペーンは最近矢継ぎ早に打ち出されたものの、トランプ政権が2025年4月2日に大規模な関税を発表した、いわゆる「解放記念日」の前ですら、迫りくる関税の脅しをセールでの行動喚起に転換しようとする動きは出ていた。
少なくとも1社の「SUBARU(スバル)」ディーラーは25年3月下旬、「関税前の節約」を宣伝し始めた。基本的に、関税によって将来生じる買い物客への負担を試算し、現行価格をディスカウントとして位置付ける作戦だ。
オリジナルステッカーを扱うStickerjunkie(スティッカージャンキー)は、同じく「関税前セール」を宣伝する25年3月のInstagramへの投稿で、値上げについては「すべての人と同じように不確か」だと認めた。
他のブランドの反応は、期間限定のディスカウントから値上げを余儀なくされる前に買い物するよう呼びかける一般的な宣伝まで幅広い。