川崎重工、神戸港でサーモン養殖 LNG船や鉄道車両の技術で育む

経済 日経ビジネス 2025年05月27日 04:01
川崎重工、神戸港でサーモン養殖 LNG船や鉄道車両の技術で育む

 いけすから網が引き上げられると、脂を乗せて丸々と太ったサーモンが跳ね上がり、日を浴びて銀鱗(ぎんりん)を輝かせた。海上自衛隊向けの潜水艦や大型船舶用エンジンなどを製造する川崎重工業の神戸工場(神戸市)。重厚長大産業の象徴とも言える工場の一角で、奇異にも見える試みが始まった。

 川崎重工は4月末、マルハニチロと共同で取り組んできた海面養殖の実証実験で、サーモン850匹を水揚げした。1月に投入した稚魚は900匹で、生存率は94%。一般的に養殖サーモンの生存率は9割とされており、それを上回った。海上でのサーモン養殖はリアス式海岸など自然条件に恵まれた環境で手掛けるのが一般的。だが、川崎重工が取り組んだ場所は、神戸港という都市港湾の岸壁だった。

 駆使したのは、同社が長年、重工業で培ってきた技術力だ。養殖システム「MINATOMAE(ミナトマエ)」には、液化天然ガス(LNG)輸送船や鉄道、航空機の製造で磨いてきた流体制御や温度管理といった様々な技術が結集されている。

 とはいえ川崎重工はなぜ畑違いの養殖に取り組もうと考えたのか。背景にあったのは、日本の漁業が抱える構造問題だ。水産庁によると、国内の漁業・養殖業の総生産量は1984年をピークに減少が続く。地球温暖化の進行によって魚の生息域が変化し、漁獲高の減少により漁師の生活を圧迫。さらに漁業が盛んなのは地方が中心で、若者の多い都市部においては、漁業という選択肢はほぼないに等しい。そこで都市部での養殖が実現できれば、若者が漁業に就業する機会を提供できるのではないかと考えた。

 川崎重工は大型港湾の岸壁など、これまで未活用だった場所に半閉鎖式のいけすを設置し、魚を育成する仕組みを構築している。

 いけす内の水流のコントロールや酸素供給は、鉄道車両の空調制御や、ガスタービンの流体解析技術を応用して最適化した。LNG輸送で培った船舶の揺れを制御する技術は、波の影響を抑える構造に生かされている。開発担当者の多くは、元LNG関連など様々なバックグランドを持つ技術者だ。

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