「子どもの命奪う」 海外支援縮小決めたマスク氏をゲイツ氏が非難

経済 日経ビジネス 2025年05月27日 09:01
「子どもの命奪う」 海外支援縮小決めたマスク氏をゲイツ氏が非難

 ビル・ゲイツ氏が、イーロン・マスク氏率いる米DOGEが米国の海外援助を縮小したことを非難した。援助を失った「貧しい子どもたちを殺害している」と言うのだ。ゲイツ氏はほぼ全財産を慈善に費やす意向。両氏は慈善活動を巡り、かねて反目し合ってきた。マスク氏は慈善よりEVを増やす方が有効だと主張する。

 米マイクロソフトの共同創業者で、億万長者の慈善家であるビル・ゲイツ氏が、世界一の大富豪イーロン・マスク氏との反目を一段と深めた。マスク氏が米国際開発局(USAID)を誤った認識に基づいて縮小したことで「世界で最も貧しい子どもたちを殺害している」と非難したのだ。

 ゲイツ氏はインタビューに答え、米テスラの最高経営責任者(CEO)であるマスク氏の行動は無知によるものだと述べた。ゲイツ氏は、今後20年間で自身の慈善団体「ゲイツ財団」を通じて寄付を加速し、財団自体は2045年に活動を終了すると発表している。

 マスク氏率いる「政府効率化省(DOGE)」と呼ばれる組織は2月、米国の海外援助を仕切る主要機関であるUSAIDを事実上閉鎖した。「死ぬべき時が来た」との理由だった。

 かつて、やはり世界一の大富豪だったゲイツ氏は、援助が突然縮小されたことで、命をつなぐ食糧や薬品の在庫が倉庫で適切に管理できずに廃棄されようとしており、麻疹(はしか)やエイズ、ポリオなどの感染症が再流行する恐れがあると指摘した。

 ゲイツ氏は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に「世界一の金持ちが世界で最も貧しい子どもたちを殺害している構図は美しいものではない」と語った。

 同氏によると、マスク氏は、母親から赤ん坊へのエイズウイルス(HIV)感染を防ぐ活動をしているモザンビークのガザ州にある医療施設への援助支出を停止したという。米国が中東ガザ地区のハマスにコンドームを提供しているものと誤解したためだ。ゲイツ氏は「マスク氏には現地に行って、自分が援助を打ち切ったせいでHIVに感染した子どもたちに会ってもらいたい」と述べた。

 69歳になったゲイツ氏は5月8日、今後20年で自身のほぼ全財産をつぎ込み、ゲイツ財団を通じて2000億ドル(約29兆円)超を世界の医療や開発、教育に寄付する計画を発表した。同財団が過去25年間に寄付した総額は1000億ドル。ゲイツ財団は、当初の構想より数十年早く、45年に解散する。

 ゲイツ氏は支出を加速する理由を、寄付の効果を最大化するためとした。ポリオ撲滅やエイズ治療などの恒久的な解決策を見いだせる可能性があるという。

 ゲイツ氏は「これで計画は明快になる。財団を永続させる取り組みをせず、これから20年かけて資金を取り崩していくのだから、はるかに多く注ぎ込める」と語る。

 ゲイツ財団は今後、年約100億ドル(約1兆4000億円)に引き上げる予算の大部分を、ワクチンや母子の健康保護を中心とする世界の医療のために引き続き支出する。それでも、USAIDの縮小による不足分を、民間の慈善事業で埋めることはできないとゲイツ氏は指摘する。USAIDの予算規模は24年に440億ドル(約6兆3000億円)に達していた。

 ゲイツ氏は自分の子どもたちに残す財産は1%以下にする意向だ。「世襲財産」をつくらないため、高率の相続税と「かなり高度な累進課税」を支持していると同氏は語った。

 ゲイツ氏は、慈善団体という財団の立場を節税目的で利用していると批判されてきた。また、巨額の富を注ぎ込んで、世界の医療の優先度に不当な影響を及ぼしているとの批判もある。

 ゲイツ氏は今回の決定について語った文書の中で、以下のように述べている。「私が死んだ時、人は私について多くのことを言うだろうが、『金を持ったまま死んだ』とは絶対に言われたくない。今、世界には緊急に解決すべき課題が多過ぎるのだ」

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