[新連載]脈打つ「iPS心臓」 万博で関西の医療技術に脚光、事業化に課題

経済 日経ビジネス 2025年05月26日 11:01
[新連載]脈打つ「iPS心臓」 万博で関西の医療技術に脚光、事業化に課題

 3cmほどの心臓がドクドクと拍動している。赤い培養液で満たされたガラス製の円筒容器の中で、その小さな臓器は命を宿しているかのようだ。

 これは大阪大学大学院医学系研究科の澤芳樹特任教授が中心となって開発した「iPS心臓」。iPS細胞からつくられた心筋シートを重ね合わせて、心臓の形に整えた。

 血液を全身に送るポンプとしての機能はないものの、澤氏は「あのように動くものは世界で誰もつくることに成功していない。大きな科学的発見だ」と意義を強調する。

 現在iPS心臓は、大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」で展示中だ。連日多くの来場者が、鼓動するiPS心臓に目を見張っている。万博は、大阪・京都・神戸を中心に、関西地方で培われた医療技術の底力を世界に発信するショーケースとなっている。

 関西の医療産業には厚みがある。医療機器を手掛ける島津製作所、オムロンヘルスケア、ニプロ、シスメックスなどが関西に本社を置く。江戸時代から薬問屋が軒を連ね、「薬の町」として知られる大阪中心部の道修町には、現在も武田薬品工業や田辺三菱製薬、小野薬品工業などの製薬会社が本支社を構える。関西には、大阪府吹田市の国立循環器病研究センター、京都市の京都大学医学部付属病院、神戸市立医療センター中央市民病院など、高度な臨床試験を実施できる病院も存在する。

 有力な医療系研究機関も多い。例えば大阪大は医療機器や再生医療などの実用化に力を入れてきた。京都大はノーベル賞を受賞した山中伸弥教授のiPS細胞研究を起点に、再生医療の分野で世界をリード。神戸大学では医学と工学をまたぐ学際的な研究が進んでいる。

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