体が痛かったり、足がしびれたりする症状が出たら、病院に行きますか。一時的に症状が治まったら、様子をみようと考えるかもしれません。ただ、状況によっては受診して検査を受けたほうがよい場合もあります。
高血圧と脂質異常症の治療のため、定期的に通院する40代前半の男性患者さんがクリニックを訪れて「1週間前から左腕にしびれと脱力の症状が出るようになった」と訴えました。しばらくして症状が治まっても、また発症するそうです。その症状が何回か出た段階で、男性患者さんは「心配になって近くの救急病院を受診しました」と話してくれました。その病院で受けた「MRI」では脳梗塞や脳出血、脳腫瘍の原因となりそうな異常は見つからなかったそうです。頸椎(けいつい)の病変も疑われて整形外科も受診したそうですが、そこでの検査でも、やはり「異常なし」。原因がはっきりしないのに、症状は続くため、かかりつけ医である私のクリニックに来たそうです。
そのとき、男性患者さんに症状は出ていませんでしたが、そのような経緯だったので脳の血管を詳しく調べてもらったほうがよいと考えました。すぐに脳神経内科を紹介したところ、当日に入院することになりました。そこで改めてMRA(磁気共鳴血管撮影法)で検査をすると、中大脳動脈という比較的太い脳の血管の一部にかなり狭くなっている部分があると分かったそうです。その部分が時々、詰まったようになり、脳の血流が一時的に滞るため、左腕にしびれや脱力が発症したと考えられます。
このような病態を「一過性脳虚血発作」といいます。一時的に、しびれや脱力などの症状が出るのですが、数分から数十分程度のうちになくなります。この症状が出てから1、2日のうちに脳梗塞を発症する可能性が非常に高く、その期間に何もなかったとしても数カ月のうちに脳梗塞になるケースも珍しくないため、注意が必要です。治療する際は一般的に脳梗塞の予防として、血栓をできにくくするために抗血小板薬を投与します。
この男性も、抗血小板薬の投与を開始した後は症状が出なくなったそうです。その後に受けたMRIでも脳梗塞の発症は見られず、普段通りの生活ができています。最初にクリニックに来たときは、かなり不安そうでしたが、投薬後の外来では「治療が始められてよかったです」と安心した表情で話していました。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)