特別養護老人ホームに入所している認知症の人の心のケアに役立てようと、名古屋市内の施設に「バスの来ないバス停」が設置された。実際に使われていたバス停の標識を流用。認知症の人は「自宅に帰らなければ」という思いが高まる症状が出る場合があり、施設にバス停があることで外に出てしまわずに立ち止まり、無理に引き留めることなく、気持ちを落ち着かせることができるという。
バス停はJR東海バス(名古屋市)から、特養ホーム「なごやかハウス希望ケ丘」に寄贈された。昨年12月のダイヤ改正で使われなくなった「日進駅前」(愛知県日進市)のバス停を再利用。停留所名は施設の名前に変更されている。
「バスの来ないバス停」の取り組みは、認知症の入居者の迷子や失踪に悩まされていたドイツの老人介護施設が発祥とされている。その後、帰宅願望が高まった認知症の人に寄り添った「罪のないウソ」「悪意のないウソ」として日本でも広まっている。来ることのないバスを待つ認知症の高齢者に声をかけ、安全に保護する仕組みだ。
今回はホーム側からJR東海バスに相談があり、実現した。贈呈式では、同社の小笠原均社長は「廃棄するバス停が新たな役目を担って今後もお役に立てることはバス会社としてうれしい。今後も地域の皆さまとともに歩んでいきたい」と話した。ホームの木全啓施設長は「バス停についてご相談したところ、熱心に耳を傾けてくれ、ご快諾いただいた。入所者の皆さまのため、このバス停を今後も大切にしていきたい」と感謝の気持ちを語った。