台湾有事に米軍が介入すれば、米中という核大国同士が直接、軍事衝突する未曾有の事態となる。推移次第では、核兵器の使用も排除できない。そんな「誰も望まない」事態に踏み込んだシミュレーションをまとめたのが、2024年12月に米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が発表した報告書だ。報告書は、米中が本格的な核戦争に至り、数億人が死亡する可能性があることを突きつけた。
台湾有事のシミュレーションは、通常戦力による戦闘を想定しているものが多い。この連載で紹介してきた報告書の中には核兵器の使用を想定したものもあったが、それも中国が威嚇を目的として洋上で核を爆発させた時点で終了した。中国や米国が、台湾を巡る武力衝突からエスカレートし、双方の戦力や都市に核攻撃を加える事態は「一線を越える」ものであり、想像しにくいのも確かだ。
だが、CSISと米マサチューセッツ工科大が共同でまとめた報告書「アルマゲドン(世界最終戦争)に向き合う」は、台湾有事で核兵器が使用されるのはどういう場合か、使用された場合にいかなる影響が及ぼされるのかという問いに踏み込んだ。
シミュレーションには米国の元政府高官や米軍将校、研究者ら計85人が参加。参加者は、米中の核戦力の構成が予測可能な28年に中国が台湾に侵攻したという想定で、米国、中国、日本それぞれの統合部隊司令官役に分かれて15回繰り返した。
シミュレーションは28年時点で米中が保有する核弾頭数を、米国は1550発、中国は840発と想定した。中国の弾頭数は、米国防総省が昨年12月に公表した中国の軍事力に関する年次報告書が推計する600発台より多いものの、米国は数的優位を維持していることになる。
中国の核態勢については米国への「報復」重視か、米国に似た「低出力核」を保有するかの2つに分けた。さらに、米軍が縛られる交戦ルールとして、中国本土への攻撃を許可されない▽中国本土への攻撃は許可されるが、核搭載可能なミサイルや核関連の指揮系統への攻撃は許可されない▽どんな攻撃も認められる-の3種を想定し、中国の核態勢と掛け合わせて6つのシナリオを策定。それぞれのシナリオに基づき2~3回のシミュレーションを実施し、合計で15回行った。