昨年の4月号で創刊100周年を迎えた「JTB時刻表」。その歴史を通して鉄道や観光、人々の暮らしの変化を振り返る「JTB時刻表100年誌」がJTBパブリッシングから発売されている。
100年分の表紙のほか、索引地図や特急の運転系統図など、さまざまなテーマに沿った記事が掲載されている。その中で興味深かったのが掲載された広告。昭和40、50年代の裏表紙だった日本興業銀行(現みずほ銀行)のお祭りカレンダーが懐かしい。
ホテル・旅館の広告も時代を反映していた。北関東や伊豆、箱根の旅館が多く、30年代ごろは旅館名だけだったが、40年代に入ると、宴会場の広さや数、ボウリングや専属バンドによるショーが楽しめるということをセールスポイントにする広告が増えている。高度成長期で黙っていても首都圏から社員旅行の客が来た時代だったのだろう。
広告にタレントやスポーツ選手を起用している旅館もあった。草津温泉の旅館は大相撲の元大関貴ノ花、藤島親方がキャラクターを務めていた。単独だけでなく、1988年8月号のように花田一家4人のケースもあった。後の横綱若乃花の勝少年が「勢ぞろいした僕たちファミリー」、横綱貴乃花の光司少年が「食いしん坊も大満足」と話していてほほえましい。
78年3月号のプロ野球巨人が毎年納会を開いている熱海のホテルの広告では往年の名選手「青バット」の大下弘さん、「ジャジャ馬」の青田昇さんが打撃のポーズを披露。「泊まって食べて遊べる 旅の三冠王だね」「大人の修学旅行」というコピーは秀逸。ホテルのターゲットは、プロ野球が好きな層だったのだ。
現在、定期的に発売されている時刻表復刻版では広告は非掲載となっている。JTBパブリッシングは「今は存在しない企業の広告も多くて許諾を取り切れないため」としている。
廃ホテルが放置され、問題になっているのが鬼怒川温泉(栃木)。それらの施設もかつて広告を出していた。「デラックスな旅」「1200名様収容」の文字が今となっては悲しい。バブル経済末期までは隆盛を誇ったが、バブル崩壊で団体客が減り、過剰な設備への投資を回収できずに廃業に追い込まれていった。
平成に入るころになるとカプセルホテルが目立つようになった時刻表の広告。現在は載っていない。同社は「ホテル、旅館の集客スタイルの変化(電話予約からオンライン予約へ)が大きい」と理由を説明する。かつては「全日本ビジネスホテル協会加盟ホテル」の一覧が掲載され、一人旅のときの電話予約に便利だった。外観も部屋の様子も知らずに向かい、当たり外れがあったのも一興だった。(鮫島敬三)