中低所得の子育て世帯、米欧より重い税・保険料 国民会議で試算

経済 日経新聞 2026年04月02日 18:33
中低所得の子育て世帯、米欧より重い税・保険料 国民会議で試算

政府は2日、消費税や社会保険料の支払いから児童手当などの現金給付を差し引いた子育て世帯の負担に関する試算を公表した。世帯年収が540万円を下回る世帯は米欧主要国の平均値よりも負担が重い実態が鮮明になった。

超党派でつくる社会保障国民会議の下に設けた有識者会議で同日示した。これまでは所得税や社会保険料を対象とした民間試算をもとに議論していた。有識者から消費税を加味した試算を求める声が出ていた。高市早苗政権が導入を掲げる給付付き税額控除の制度設計に向けた土台とする。

税と社会保険料の負担から、児童手当や生活保護といった給付を差し引いた「純負担率」をはじき、米国、英国、ドイツ、フランスの4カ国合算の平均値と比べた。夫婦とも35歳で5歳と2歳の子どもがいる共働き世帯と、25歳の単身世帯の2つをモデルケースとした。

子育て世帯では、世帯の合算年収がフルタイムで働く日本の1人当たり平均年収(540万円)を下回ると、4カ国平均の同じ所得層よりも負担率が高くなる結果となった。とりわけおよそ年収400万円台までの所得層は、欧米と比べて収入増に伴う負担率の上昇度合いも高い。

世帯年収が540万円を上回ると、収入の増加に伴う負担の伸びは緩やかになり、欧米よりも負担率が低くなる。

単身世帯の負担率は、一部の低所得層を除き、ほとんどの年収層で4カ国平均を下回った。子育て世帯は単身世帯に比べて、より幅広い年収層への給付が必要になる可能性がある。

国民会議に参加する日本総合研究所シニアフェローの翁百合氏は2023年、税や社会保険料の負担率を世帯年収別に国際比較する分析を公表した。年収300万〜400万円程度の子育て世帯の負担率が海外と比べて高いことを示したグラフは「翁カーブ」と呼ばれ、政府内で共有されてきた。

翁氏の分析では、所得税と住民税の直接税を税負担の対象としていた。今回の分析は消費税負担の影響を加味した「政府版の翁カーブ」といえる。翁氏の分析に比べて全体的に負担率が高くなる結果となった。家計の生活実感により近い分析ともいえる。

日本は海外と比べて年金や医療、介護などの社会保険料の負担が重い半面、所得の低い子育て世帯への給付が手薄だ。社会保険料は所得税などに比べて累進性も乏しく、相対的に負担が膨らみやすい。欧米は中低所得者への手厚い給付がある。

所得が低い人が払う保険料が重いと就労意欲をそぐとの指摘は根強い。2日の会議では「就労促進や子育て支援の観点をいれるべきだ」との意見が出た。現役世代の保険料負担を軽くし「所得に応じて手取りが増えるようにすべきだ」との声もあがった。

政府は同日、年金を受給する高齢者世帯の純負担率の試算も提示した。75歳の単身世帯、夫婦世帯のいずれも受給が税・社会保険料の負担を上回った。どの年収層でも年金給付が受益を押し上げていた。高齢者世帯を給付付き税額控除の対象に加えるかどうかは今後の論点となる。

正確な給付につなげるためには、所得把握の仕組みも欠かせない。大和総研主任研究員の是枝俊悟氏は迅速に制度を実現するために、年末調整など既存のインフラを活用すべきだと唱えている。

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