イランが中東産原油の輸送上の要衝、ホルムズ海峡を事実上封鎖している影響で、国内の化学メーカー各社でも3月中旬以降、石油関連製品の値上げが相次いでいる。原油を精製してできるナフサの供給不安やナフサから作られるエチレンなどの減産が相次ぎ、エチレンから作られる塩化ビニール樹脂やポリエチレンなどを使う製品にも影響が及ぶ。最終製品では食品包装用のフィルムやトレーなど幅広い分野に使われているだけに、今後、家計の負担が増える可能性もある。
化学メーカー各社は原油を精製してつくるナフサから、幅広い素材の材料となるエチレンなどの基礎化学品を作っている。原油は国内消費量の9割超を中東に依存。ナフサも4割超を中東からの輸入に頼る。
原油やナフサの調達が不安定する中、ナフサから作るエチレンの減産も相次いでいる。国内に12基あるエチレン生産設備のうち、6基が減産を決定。エチレン生産設備は止めてしまうと再稼働まで時間がかかるため、減産に踏み切ったが、化学メーカーの担当者は「稼働率が下がるので生産性も悪くなり、当然生産コストは上がる」と明かす。
三菱ケミカルは3日、ナフサを原料として、主にペットボトル飲料のラベルに使われるフィルム製品2種類について、1キロ当たり現行価格から80円~110円値上げすると発表した。5月11日出荷分から適用する。同社広報は「過去の値上げではなかった上げ幅になった」と話す。
同社では3月中旬以降、スーパーや飲食店などで使用する業務用の食品包装用ラップフィルムなどの値上げの発表も相次いでいる。
積水化成品工業は、エチレンを原料とする食品トレーやカップ麺の容器の材料となるプラスチックの1種「発泡ポリスチレンシート」を21日出荷分から1キロ当たり120円値上げする。
原材料コストの変動を迅速に製品価格に反映する動きも出てきた。東レは先月27日に暫定的な措置として、炭素繊維や樹脂など一部の製品に「サーチャージ制」を導入した。これまで数カ月かかっていた価格への反映を最短1カ月で行う仕組みで、製品価格を迅速に見直すことで生産や業績への影響を抑える考えだ。
みずほ証券の荻野泰治シニアクレジットアナリストは「最終的に食品包装材やタイヤ、塗料などを製造されるなど、石油化学製品のサプライチェーン(供給網)は裾野が非常に広い産業」と指摘する。
帝国データバンクも、中東情勢の緊迫化に伴う石油の調達難や円安の長期化による輸入物価の上昇に、さまざまなコスト増が複合的に上振れした場合、「2026年後半に値上げラッシュが再燃する可能性がある」と警鐘を鳴らす。(永田岳彦)