「シーズン中は僕、ブルペンに一回も入らないので」。宮崎市で行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の強化合宿。初の代表入りとなった菊池雄星(エンゼルス)の口からさらりと出た一言に、思わず耳を疑った。
野球を知る人なら、その異質さに驚くだろう。先発投手は通常、登板2~3日前にブルペンで投球練習を行う。実際に立つマウンドと同じ傾斜を使って投げ込み、体を試合モードに仕上げていく。
大リーグ8年目を迎えた34歳は違う。「投げなければけがをしない。だから、なるべく球数を減らしたいんです」。日本より2日短い、中4日での過酷な登板にどう耐えるか。考え抜いた末に行きついたのは、大リーグでも類を見ない独自の調整法だった。
代わりに行うのが、徹底したイメージトレーニングだ。背後の走者を見やり、息を吐き、自分の間合いで腕を振る。合宿で独り調整する菊池の姿には、シーズン終盤戦さながらの張りつめた空気が漂っていた。