人工的なiPS細胞を使い、難病を治療する「再生医療製品」の製造販売が、条件付きで国に承認されました。今回の承認はどんな意味があるのでしょうか。中高一貫校に通うはるとさん、ひなたさんの会話から考えてみましょう。
はると 加工した細胞を使い、体の機能を修復したり病気を治療したりする医療を「再生医療」というらしいね。iPS細胞による日本発の再生医療技術が初めて実用化されると聞いたよ。
ひなた 2種類の再生医療製品が条件付きで製造販売できるようになり、今秋にも治療が始まるそうよ。難病を根本的に治す可能性があるといわれているの。
はると iPS細胞は、京都大の山中伸弥教授らが作製に成功し、山中教授はノーベル生理学・医学賞を受賞したね。多様な細胞に成長する「夢の細胞」といわれるけれど、どう役立つのかな。
ひなた 患者に合わせてiPS細胞から神経や臓器のもとになる細胞を作って移植し、病気などで失われた機能を取り戻す効果が期待されているわ。難病治療の新たな選択肢といわれているの。
はると 2種類の製品は、重い心臓病患者向けの「リハート」と、難病のパーキンソン病の患者を対象とした「アムシェプリ」だね。リハートは心筋シートとして、昨年の大阪・関西万博に出展されていたよ。
ひなた リハートは患者の心臓に貼り、アムシェプリは脳に注入して、それぞれ機能の回復を図るそうよ。パーキンソン病の国内患者は推計25万人といわれ、患者団体から「期待感は大きい」との声が上がっているわ。
はると 2製品は、少人数の治験で従来の薬にない改善効果がみられ、条件付きで製造販売が認められたよ。自動車免許でいえば「仮免許」にあたるけれど、今後はどうなるのかな。
ひなた 「仮免許」の期間は7年間で、多数の症例を集める必要があるの。再審査で十分なデータを示し、有効性と安全性が確認されれば、条件なしで製造販売できる本承認を得られるそうよ。
iPS細胞を使った再生医療製品のリハートとアムシェプリの製造販売が、条件と期限付きで承認されました。
細胞を加工した再生医療製品は品質管理が難しく、有効性や安全性を裏付けるデータの収集に時間がかかります。早期の実用化に向け、限られた症例から有効性を推定できた段階で条件付きの製造販売を認める制度が導入されました。条件付き承認は過去にもありますが、今年3月末時点で本承認に至った例はなく、ハードルは高いといえます。
高度な技術を要する再生医療製品は、開発コストを反映して高額になる傾向があり、リハートは1千万円以上ともいわれます。多くの患者が利用できる一般医療として普及するには、良質な細胞を大量に培養できる生産基盤が必要です。
iPS細胞って? 血液や皮膚の細胞を加工することで、多様な種類の細胞に変化する能力を備えた「人工(induced)多能性(Pluripotent)幹細胞(Stem cell)」。一人一人から自身のiPS細胞をつくることができ、再生医療や創薬の研究が行われている。
リハートって? 心臓の筋肉(心筋)の血管が衰えて酸素などが不足し、機能が低下する「虚血性心筋症」を治療する再生医療製品。iPS細胞由来の心筋細胞をシート状にして心臓に貼り付け、新たな血管を形成させる。大阪大の澤芳樹特任教授が技術責任者を務める大阪大発の新興企業クオリプスが開発した。
アムシェプリって? 運動機能に関わる脳内物質ドーパミンが減り、手足の震えや歩行障害などを起こすパーキンソン病を治療する再生医療製品。iPS細胞から、ドーパミンを分泌する神経のもとになる細胞を作製し脳に注入する。京都大の高橋淳教授らが研究し、住友ファーマが開発を手掛けた。