※日経エンタテインメント! 2025年4月号の記事を再構成
推し活の楽しみの1つが“推し”のグッズ類の収集だろう。現場の話を聞くと、かつてのコレクション的傾向から、外に持ち出し、仲間と共有する方向へ広がっているという。
急速に拡大を続ける「推し活」市場。その特徴は以下に集約できる。第1に、SNSを基盤とした「見せる・共有する」文化の確立。第2に、実用性とファッション性の融合。第3に、グローバル化の加速である。
そもそもマンガやアニメのファンたちの活動は、従来、「集める」という行為を中心としていた。そこが「見せる・共有する」という新たな価値観が登場したのだ。
「コレクション性自体は変わらないものの、2010年頃から缶バッジや痛バッグといった、集めたものを見せる文化が徐々に増えてきた」と説明するのはアニメイト梅田の鹿塚加奈子氏。その変化は店頭の光景に如実に表れている。「推し活関連の売り場面積は年々拡大しており、アクリルスタンドやぬいぐるみの専用ケース、収納グッズなど、商品カテゴリーも多様化しています」(鹿塚氏)。
若い世代の間では、SNSで推し活を共有することが当たり前の文化となっている。かつては一部のコアなファン向けだった商品群も、「共有」することが可能になり、より幅広い層に受け入れられるようになってきているという。
「TikTokなど、Z世代に関しては特にシェアしたいという気持ちが強い。以前は『自分の趣味や好みなんて他には理解されない。ひっそりと自分の世界に浸りたい』という感覚だったが、今は『同志や仲間を作りたい』という方向に変わっている」とロフトの商品本部IP開発担当の小倉淳也氏は分析する。
この文化の変容は、商品開発にも影響を与えている。コクヨの開発本部の杉田真由氏は「以前の『オタク』という言葉は自分の中で楽しむものという印象が強かった。それがSNSの普及とともに『推し活』という言葉に変わり、人にも紹介して応援する活動自体を楽しむ方向に変化した」と解説する。
学生の実態調査からも、その変化は顕著だという。「実際に学校に足を運んで、学生のペンケースの中身を見せてもらうと、文具と一緒にアクリルスタンドがたくさん入っていたり、推しグッズと一緒に使われていたりする例が増えています」。
推し活グッズの中で、特に人気を集めているのが、推しを持ち運べるぬいぐるみやアクリルスタンド。そして最近はそれらを汚れや傷から守りつつ持ち運ぶためのポーチも売れ筋となっている。「サイズ展開も豊富で、用途に応じて選べるようになっています。例えば、通学時に持ち運びたい場合は小型のものを、イベント参加時は大きめのサイズを、という具合です」と鹿塚氏。
さらに、「見せる」「隠す」の使い分けにも工夫が凝らされている。コクヨの「ピープ」シリーズは、透明な素材と不透明な素材を組み合わせ、状況に応じた使い分けを可能にした。「インスタグラムで『勉強アカ』と呼ばれる投稿をする人たちが、お気に入りの文具は見せたいが、事務用品は隠したいという傾向があることから生まれた商品ですが、トレーディングカードやアクスタなどを収納し推し活グッズとしても使われています」と杉田氏は説明する。
推しを持ち運ぶためのアイテムは、他社からも続々と登場している。「リヒトラブの収納ケースは、推し活ユーザーの細かなニーズに応える形で開発されました。実際の売れ行きも予想を上回っています」(ロフト・商品本部文具雑貨部・バイヤーの沼田悠子氏)。
この記事は会員限定(無料)です。