ミラティブが配信者支援を拡大、全プラットフォーム対応で個人勢を重点支援——2社グループ化で「オールフォーストリーマー」戦略始動

経済 The Bridge 2025年05月26日 16:00
ミラティブが配信者支援を拡大、全プラットフォーム対応で個人勢を重点支援——2社グループ化で「オールフォーストリーマー」戦略始動

ミラティブは26日、新規事業戦略発表会をオンラインで開催。同社代表取締役の赤川隼一氏は同社の事業領域拡大を宣言した。

「ミラティブ社はこれまでミラティブという配信アプリの会社でした。これからはミラティブアプリにとどまらず、YouTube、Twitch、あらゆるプラットフォームの配信者、ストリーマに向き合う会社へと進化していきます」(赤川氏)。

この事業領域拡大の背景には、配信文化の急速な拡大と多様化がある。同氏は配信者の存在について「ストリーマーという存在そのものがプラットフォームになってきている」と分析し、この傾向が今後さらに加速するとの見通しを示した。

ミラティブは2015年の創業以来、「スマホひとつで、誰でも気軽に配信を始められる」環境を提供し、日本中の配信者の”最初の一歩”を支えてきた。2018年からはバーチャルアバター「エモモ」でのアバター配信、2022年からは視聴者が配信者のゲームプレーに介入できるライブゲームを展開し、現在は日本最大のアクティブ配信者数を誇るプラットフォームとして黒字運営での売上成長を続けている。

その拡大として、新たな事業展開の核となるコンセプトが「オールフォーストリーマー(All for Streamer)」だ。「すべては配信者のために」という理念のもと、ミラティブアプリの枠を超えて、あらゆるプラットフォームの配信者支援に乗り出す。この展開においてミラティブアプリは引き続き成長を継続し、その基盤の上で事業領域を拡大していく方針だ。

赤川氏は配信者の普遍的なニーズとして3つの要素を挙げた。

「配信者の需要というものについては、YouTube や Twitch の配信者であっても、基本的には共通している。ファンが増える、収益が上がる、神回が生まれる。この3つがもたらされると、配信者の皆さんは喜んでくれる」(赤川氏)。

同社はこれを配信者の「ファン獲得」「収益化」「撮れ高向上」の三軸支援と表現され、これをミラティブらしく言い換えると「配信者とファンの間に物語が生まれる手助けをする」ことになる。

新事業展開において、ミラティブが特に注力するのが個人配信者(個人勢)の支援だ。

赤川氏は「この個人勢という存在は、VTuber の中でも、今や最も多くの視聴時間を占める存在」と現状を分析し、個人配信者には「グッズを作るだけでも大変だし、交流の場を持つのも大変だ。そもそもどうやってファンを増やすんだ、新しい人に知られるにはどうすればいいんだ」といった独特の課題があると指摘する。

この個人配信者の活動をさらに活性化させる「オールフォーストリーマー」戦略の実現に向け、ミラティブは配信者向けツール運営のキャスコードと VTuber 事業のアイブレードという2社と資本業務提携・M&A を通じて連携し、ミラティブグループとして新たなソリューション提供を開始することを発表した。子会社化した件についての株価や株式交換などの諸条件については非公開。

まず注目されるのが、キャスコードが運営する PC 配信者向けツール「CastCraft」だ。同サービスは OBS や Streamlabs Desktop、XSplit など主要な配信ソフトに対応し、配信中の全視聴者管理、コメントの音声読み上げや画面表示、視聴者の行動に反応するインタラクティブな演出などを簡単に実装できる。2019年からサービスを開始し、昨年プロダクトマーケットフィットを達成して急成長を遂げており、現在すでに万単位の配信者がアクティブに利用しているという。

キャスコード代表取締役の中川翔太氏は2018年3月の設立以来、CEO と CTO の2人チームで長年配信者という存在だけに向き合い続けてきた。赤川氏は「とても尊敬できるプロダクト」と評価し、今後はキャスコードのユーザー数を日本にとどまらず世界に拡大しながら、ミラティブの持つアセットや AI ソリューションとの連携を進める方針を示した。

一方、アイブレードが運営する「ぶいきゃす」は VTuber と企業をつなぐキャスティングプラットフォームとして機能している。台頭する個人 VTuber を中心に多くの VTuber と企業をマッチングさせ、プロモーションやコラボ商品展開を支援している。

ミラティブの世界中のゲーム会社とのネットワークを活用して、すでに中国 Team Neo 社の「Delta Force」や昨年の大ヒットゲーム「きのこ伝説」、スクウェア・エニックスの新作タイトルなど、近年のヒットタイトルでブイキャスの利用実績が生まれている。

アイブレードはさらに「Rock on V」という VTuber と生バンドによる新感覚音楽ライブイベントも展開している。先月池袋の晴れ舞台で実施されたイベントでは、3D フルトラッキングで生バンドがリアルタイム演奏を行い、多くの VTuber が出演する業界でも例のないイベントとなったそうだ。

ミラティブグループが展開する新規事業の中でも特に注目されるのが、CastCraft とインフルエンサーマーケティングを組み合わせたシナジー効果だ。既存のインフルエンサーマーケティングでありがちな配信者が商品やサービスを紹介するだけの案件配信ではなく、CastCraft のエフェクト機能と連動させることで、視聴者のアクションがリアルタイムで配信に反映される新しい体験を実現している。

具体的には、視聴者が配信の概要欄などからゲームをダウンロードしたり商品を購入したりすると、その瞬間に視聴者の参加を知らせる演出が配信者の画面に表示される。商品が購入されたりアプリがダウンロードされたりすると配信で演出が出て、配信者が「ありがとう」と言ってくれるようなシーンが想定される。

「ただインフルエンサーさんが配信をするだけという案件配信も世の中には多いんですけれども、CastCraft でサポートさせていただくことで、配信の楽しさも増幅して、PR 案件としての効果も、マーケティングとしてはよりパワフルなことを、我々としては一緒に実現していきたい」(赤川氏)。

さらに個人配信者ならではの課題に対し、ミラティブは多角的なソリューションを展開している。金融サービス分野では3月に発表された「ミラティブ推し活カード」の展開を検討している。

ミラティブが資本提携を行っている丸井グループ・エポスとの提携により、カードの券面を自分の推しの配信者にでき、さらにこのカードを使ってスーパーやレストランなど日常的な決済を行うと、自分にポイントが入るだけでなく、推しの配信者にも少しポイントが入る仕組みの実現を目指すそうだ。

詳細についてはこれから検討していく段階だが、「日常生活そのものが推し活になる」というコンセプトで、ミラティブの人気配信者からは大きな反響を得ているという。

さらにさらにリアルイベントでの支援も本格化している。

同じく丸井グループと共同で展開する「ポップアップストア」を VTuber 向けに拡大し、6月開催予定の第1回はすでに30名を超える個人 VTuber の出演が決定しており、「個人の VTuber にとって、有楽町の一等地の丸井でお店が出せるという体験は、とても魅力的に捉えていただいているようで、非常に熱烈な反応を受けています」(赤川氏)とした。

こうした独自性を生かして、ミラティブグループの BtoB 事業はゲーマーや配信者向けのクリエイティブエージェントのような形態に進化していく。

ゲーマーや配信者のファンは「もはや全くニッチなものではなく、若者の文化においては、むしろマスだと言える存在」(赤川氏)であり、そこにクリエイティブな形で仲介ができる企業は決して多くない。

かつて、2018年のにじさんじ一期生の初配信の多くがミラティブ上で行われ、ミラティブをきっかけに有名になった配信者も多数存在する。赤川氏は「長年、有名かどうかは全く問わず、個人の配信者たちと向き合ってきた。得意領域はここだ」と自信を示し、ミラティブが日本で最も多くの配信者、かつ多様な配信者に向き合ってきた会社だと強調した。

確かにここにポジションするのは、これまでずっと配信者ファーストで事業を手がけてきた赤川氏らしい、ミラティブらしい選択だと思う。

「AI が劇的にすべてを変える激変期が現在です。ミラティブ社でも僕自身もその変化に日々興奮して AI 活用の推進を行っている。一方で、その AI を使う人間の分かり合いたい願いというものについては、全く変わらないと感じています。AI が進化しても、その AI を扱う人の分かり合いたい気持ちや分かり合う願いというものは変わりません。私たちはこの願いに向き合い、分かり合う願いをつなげていき、ユーザーさん配信者さんに今後向き合い続けるその姿勢を通して、サービスとしてはより進化していく」(赤川氏)。

ミラティブは配信文化を深く理解した上で CastCraft のような独自演出を掛け算することで、スポンサー企業や VTuber・ストリーマー、広告代理店をつなぐ存在になっていく。

今後も M&A や資本提携といった手段を柔軟に活用しながら、支援領域の拡張と価値提供の深化を図り、配信者とファンの間に「ナラティブ(物語)」が生まれる場面を創出することで、配信業界全体の発展に貢献していく構えだ。

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