8日投開票の衆院選で、投票所入場券の発送が遅れる自治体が続出している。総務省によると、入場券のない状態でも本人確認さえできれば期日前投票などは可能だが、昨夏の参院選ではこうした制度を悪用した「なりすまし投票」も相次いで事件化した。異例の短期決戦で各地の選挙管理委員会の担当者が忙殺される中、制度の悪用を懸念する声も上がる。
「まだ案内状(入場券)が届かない」。大阪府知事選と大阪市長選を含むトリプル選となった大阪市選管には、こうした問い合わせが連日寄せられている。市選管は6日までにすべての有権者に届ける予定だが、担当者は「不安な方には『手ぶらでも投票できる』と説明している」と話す。
入場券がないまま投票所を訪れた有権者には「宣誓書」を渡して住所、氏名、生年月日を記入してもらう。これらの内容が選挙人名簿と合致すれば本人とみなす。一方、市選管では確認作業に時間がかかるとして、運転免許証やマイナンバーカードなどによる本人確認は行っていない。
1月31日に入場券のないまま期日前投票を終えた大阪市の40代女性は「簡単に投票できてよかった」とする一方、「もし他人が自分の住所や生年月日を覚えていたら、なりすましで投票することもできるのではないか」と話した。
公選法では投票所での本人確認の方法を規定していない。このため、生年月日など個人情報を知っている別人がなりすましを試みた場合、その場で選管の担当者が不正を見抜くのは難しいとの見方がある。
昨夏の参院選でも、別人になりすまし投票しようとする「詐偽投票」で20人超が摘発された。選挙権がないのに知人を装って投票したとして、愛知県警に書類送検された男性は「入場券がなくても氏名や住所などを申告すれば投票ができると解説したSNS上の動画を参考にした」などと供述したという。
なりすましの防止には、身分証明書の提示の義務付けが有効とされるものの、選挙事務の煩雑化や選挙権行使の制限などとの兼ね合いもあり、抜本的な対策は見つかっていない。関西のある自治体関係者は、記入した情報が明らかに間違っている場合は身分証の提示を求める可能性があるとする一方、「基本的には記入した人を信用するしかない」と話した。