「前向きな休止です」
昨年9月、千葉市の神谷俊一市長は記者会見で同市の公営自転車競技「PIST6」の今年3月末までの休止についてこう強調したが、市は当時から4月の再開が難しいことをすでに分かっていた。それでも休止期間を半年間に設定したのは、競輪事業の取り消しを命じることができる国に対する事業継続の意思表示の意味合いが大きい。
PIST6の売り上げがどれほど低迷しても、千葉市に財政的なダメージはない。赤字はJPFが補填する契約になっており、市には最低でも、JPFから一般会計への繰り出しが年間約1700万円ある。今回は、JPFが耐えきれなくなった形だ。ただ、市としても不人気が続けば、事業の継続について市民の理解を得られなくなる恐れもあり、立て直しを迫られた。
PIST6の前身は昭和24年開設の千葉競輪。市は平成27年、車券の売り上げが低迷し、施設の老朽化が進んでいた千葉競輪を廃止する方針を示した。そこに五輪のルールに準拠したPIST6の開催を提案したのが、JPFだった。当時市長だった熊谷俊人知事がこれを受け入れ、JPFが費用を負担する形で新しいドーム施設を建設した。
迷惑施設とみられがちな従来の競輪場とは一線を画す建物で、隣接する千葉公園の緑豊かな景観にもなじみ、周辺は多くの人でにぎわっている。施設内も洗練された雰囲気で、従来の雑然としたイメージは刷新されたといえる。
ただ、入場者数も売り上げも伸びなかった。スタート時は新型コロナウイルス禍で、どの競輪場のレースでも気軽にネットで車券を購入できる大手チケットサイトの利用者が急増。競輪人気に火が付き、全国の競輪場で爆発的に売り上げが伸びたが、PIST6はその波に乗れなかった。
演出には工夫を凝らしていたが、肝心のレース自体が面白みに欠けていた。例えば、PIST6では初心者でも楽しめるよう、主に同じ地区同士の選手で連係して競走する「ライン」をなくし、それぞれが自力で戦うシンプルなレースにした。ただ、ラインは競輪の醍醐味でもあり、コアなファンには敬遠された。
市としては他場に協力を仰いで何としても来年度中に「借り上げ開催」によるレースを実施したい考えだが、道のりは険しそうだ。専用の投票システムを打ち出し、他場の車券も購入できる券売機を置かないなど、連携を拒んで独自路線を歩んできたPIST6に対し、厳しい目を向ける競輪関係者も少なくない。
ある競輪関係者は「再開のハードルは相当高い」と話す。(松崎翼)