月裏側の奇景「牛の目」を7日に観測へ アルテミス計画の宇宙船、人類初の全貌目視に挑む

科学・医療 産経新聞 2026年04月06日 07:00
月裏側の奇景「牛の目」を7日に観測へ アルテミス計画の宇宙船、人類初の全貌目視に挑む

月の裏側に広がる不思議な地形の全貌を、人類が肉眼で確認できるかもしれない。国際有人月探査プロジェクト「アルテミス計画」の宇宙船「オリオン」は、日本時間7日、月の裏側へ回り込み、巨大な円形の地形「東の海」の観測に挑戦する。波紋のように同心円状の山並みが広がり、まるで射撃の標的の中心にある「ブルズアイ(牛の目)」に見える奇景だ。米航空宇宙局(NASA)は、観測時には太陽、月、宇宙船の位置関係がそろい、月の裏側の約2割が照らされるため、東の海の全体を肉眼で見られる可能性が高いとみている。

東の海は、直径がおよそ900キロに及ぶ大きなくぼ地で、遠い昔に天体が衝突してできたと考えられている。名前に「海」とあるが水はなく、外側に三重の輪状の山並みが広がる独特の形が特徴だ。巨大衝突でできた月の代表的な地形の1つで、月の成り立ちや太陽系で繰り返された天体衝突の歴史を探る重要な手掛かりとされる。

月の裏側の端に位置するため、地球からは一部がかすかに見えるにとどまり、全体を見渡すことはできない。アポロ計画では人類は初めて月の裏側を直接見たが、東の海については全体を肉眼で確認できたとは言い難いという。今回は、光が斜めに当たり、山やくぼみの影が長く伸びるタイミングでの観測になるとみられることから、同心円状の起伏が際立つと期待されている。

ただ、東の海そのものが未知だったわけではない。1967年にNASAの無人月周回機が詳しく撮影して以来、三重の輪が広がる牛の目のような地形であることが分かっている。それでも注目が高まるのは、その奇景を人が宇宙船の窓から実際に見れば、写真を後から眺めるだけでは捉えにくい地形や色の細かな違いも見分けられる可能性が高いからだ。

実際、1972年のアポロ17号では、地質学者でもあったハリソン・シュミット宇宙飛行士が、肉眼で月面の「オレンジ色の土」を見つけ、それが後に約36億年前の爆発的な火山噴火に由来する火山ガラスと分かり、月の火山活動史の理解につながった。NASAは、こうした例から、人の目による観察には今も独自の価値があると強調している。

今回の飛行は、将来の有人月探査に向けた観察や撮影の訓練とも位置付けられている。宇宙船の窓から限られた視界で地形を見分け、目印をつかむ経験は、将来、人が月の近くで安全に行動する上でも役立つと期待される。(伊藤壽一郎)

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