モスフードサービス・中村栄輔社長 ピークのランチ以外の需要開拓、新業態の和食店も注力

経済 産経新聞 2026年04月10日 21:17
モスフードサービス・中村栄輔社長 ピークのランチ以外の需要開拓、新業態の和食店も注力

国内店舗数で業界2位のハンバーガーチェーン「モスバーガー」などを展開するモスフードサービスの中村栄輔社長が10日までに産経新聞のインタビューに応じた。新業態の和食店「玄米食堂あえん」の店舗数を現在の4店舗から2027年度末までに2桁に拡大すると語った。主力のモスバーガーでは来店客が多いランチタイムに加え、朝や夕食時などオフピークの需要を開拓するため、朝食時間帯のメニューの刷新にも取り組む。主なやり取りは以下の通り。

――26年3月期決算では増収増益を見込むが、好業績の要因は

「商品や戦略などがお客さまにしっかり評価されていると感じる。(モスバーガーで約半数の商品を値上げした)25年3月からの1年間で見ても、来店客数が減らなかった。定番商品が下支えした上で、期間限定などのキャンペーン商品も好調だった」

--商品の価格帯を大きく3つに分ける戦略の手応えを

「同じ人でも時間やタイミング、誰と来たのかなどによって選ぶ商品が違うので、多様な商品を選べるよう準備している。主に400円台~500円台の定番商品(レギュラー)、素材などにこだわった期間限定の高価格帯の商品(プレミアム)、さらに高価格帯の高額商品(超プレミアム)が中心だが、単純な区分だけではなく、もう少し丁寧な分析を行うことで、商品戦略がうまくいっている」

--物価高で消費者の目線が厳しくなる中でも、選ばれるための工夫は

「一言でいうと、『ひと手間ひと配慮』だ。制限はあるが、おいしさを出すために、もうひと手間かけよう、お客さまにもうひと配慮しようと言っている。ランチタイム以外の利用機会が少しでも増えるように、直近では(朝の開店から午前10時半までに提供する)モーニングの朝モスの商品を刷新した」

--国内1300店超出店しているモスバーガーに次ぐ新規事業について

「期待しているのは『玄米食堂あえん』だ。モスバーガー同様に食材にこだわり、手軽に和食を食べられるというコンセプトでお客さまに評価されている。27年度末までに(倍以上の)2桁ぐらいの出店はできると考えている」

--社長就任から10年。次の社長に必要な資質は

「就任当初から、役員候補者に求められる能力やトップに求められる能力についてずっと言い続けている。社員共通のモスの心を理解して、モスバリューを体現することは前提となる。その上でトップに必要なのは指導力、構想力、変革力と周りからわかりやすい人であることが大切と思っている。言っていることと、やってきたことや今やっていること、その一貫性に関して自身が気付いているかが大事だと思う」

--若い時から創業者の桜田慧元社長に仕えた経験はどう生きているか

「入社7日目に、株主総会の書記役を任されてから接点は多かった。総会のリハーサルでは用意していた水差しを本番で用意し忘れたときに、元社長は『自分で使うものなんだから最後に自分で確認すればよかったな』と言って、部下を責めなかった。偉いと思ったし、トップは自己責任が大切だと感じた。翌年の総会で、同じ失敗をしないために私がチェックリストを作るとすごく評価されたのも印象に残っている」

――モスバーガーの海外事業の戦略は

「27年度末までは現在出店している国・地域で基盤を強化する時期と考えている。新しい国・地域への出店はそれからだ。300店規模ある台湾については、供給体制をしっかり構築するため、老朽化している生産工場の刷新を行う。海外事業の基盤が強固になれば、新しい国・地域への出店計画を前倒しで行う可能性はある」

【プロフィル】

中村栄輔 なかむら・えいすけ

中央大法卒。1988年、モスフードサービス入社。執行役員営業企画本部長、取締役執行役員開発本部長、常務取締役事業統括執行役員などを経て、2016年6月から現職。福岡県出身。67歳。

【編集後記】

取材中、中村氏の傍らにはクリップで留められた2年分の手帳があった。秘書との予定管理はスマートフォンなどで行うようになったが、手帳には毎月、対前年比の主要な経営指標の数字など必要なことを書き込むほか、失敗したことは赤、仕事関係は青、修正は黒、プライベートは緑で書き分ける。「1年間の流れはだいたいは同じ。その中ですぐに知りたい情報が一見してぱっとわかる。昨年は台風が来たから数字が悪かったんだとか。非常に仕事にも役立っている」と話す。2025年3月期に続いて26年3月期も増収増益の見通しで業績は好調だ。そんな同社を支えるトップの緻密さが垣間見えた。(永田岳彦)

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